日本ハムファイターズの来期監督に就任した新庄剛志の記者会見を見ました。
ビッグ・ボスと呼んでくれ。言ったあと、ちょっとだけ照れてて可愛かったですね。
内容は、予想以上に明晰で説得力があるコメントの数々でした。楽しかった。
若い頃の彼は、自分の言葉に予見性と影響力があることに気づいていたけど深堀りしない、という感じでした。今回はインパクトのある発言の後にすぐ、そう考えた根拠や、招くであろう結果への対策などを語ってフォローしてましたね。話の筋道が通っていたし、言葉の行く末を聞く人に想起させる構成力がありました。
大人になったな〜。
前言と矛盾するような発言はないところからも、シンプルで一貫性が保てる方針が伝わってきました。
野球から離れた長いブランクの期間、様々なことについて相当深く内省し、消化して帰ってきたんだろうなあ、と思います。「影響力とはなんぞや」という点は、特に考え抜いてきた感じ。
彼の言葉って、昔はまず一番遠くのファンなどにパァッと届いてしまっていましたよね。近くの人たちは最初はポカンとして、後からじわじわ理解していく。でも今回は、現場の関係者全員に「これは自分の仕事に関わることを言っている」って響いたんじゃないかなあ。スタが関係者だったら結構どきっとしたと思う（笑）。
＜具体的に感心した点＞
どの発言に対して感じたかは受け取り方なので省略しますが、ざっと挙げます。
①自分の懸念点について自覚があること、対策を考えていることが伝わった。
・自分が消去法からのチョイスで、しかも最後の手段での推挙であると理解してる。
・その立場については有利なものだという印象を与えた。
・現状の選手について予断がないことが強み、という印象を与えた。
・自分の型破りさへの自覚があり、規則などは重視していくことが伝わった。
・事務や実務に疎い自覚があり、担当者と相談していく姿勢であることが伝わった。
②フロントの計画優先と言われるチームに、現場の活発な活動を戻す意思を見せた。
・選手の選択権が自分にあると印象づけた。
・選手に積極的指導を行うことを印象づけた。（ハムは教えない主義、の風評がある）
・選手の態度や行動に口出しすることを印象づけた。（ハムの放任への風評がある）
③近年のチームの停滞感を直視し、対策していく意思を見せた。
・選手に対し、まず基礎を徹底する必要を感じていると伝わった。
・選手に対し、漠然とした高望みより目先へ集中する必要を感じていると伝わった。
・選手に対し、本当の影響力やスター性がある者はまだいないという認識が伝わった。
・教える側に対し、選手の能力の開発力の不足があったという認識が伝わった。
・企画に対し、先鋭的にリードする意欲の不足を感じていることが伝わった。
④過去の歴史やうまく行かなかったことに対する配慮があった。
・チーム創設時にまで遡って言及し、長い目で考える気持ちを呼び起こした。
・不備に目をつぶることなく、でも、良い点に目を向ける冷静さの必要も示した。
・全部踏まえた上で、変えて行こう、前を向こうという希望を抱かせた。
こんなところでしょうか。
ファンにとっては、近年モヤモヤが溜まっていたのは主に②③辺りのこと。直接の関係者から、その辺りについて率直な意見が聞かれなかったこと。でも、今回新庄が会見で、「うん、わかってる。そこを根本から改革しないとね」と考えているとわかったことで、めちゃめちゃスッキリしたと思うんですよ。
そして、①で、新庄はすっかり大人になっていて、何かサプライズなことも踏むべき手順に則ってやれそうだな、野球以外での馬鹿げた失敗は少なそうだな、って安心できて。ここまでで、ハムファンはかなり心に余裕が生まれたんじゃないでしょうか。
もう、そこさえ考えてやってくれたら文句ないわ。元々そんな高望みしてないし。今そんなに急上昇できる力が無いのはわかってるんだし。オリックスの今年の躍進と比べるのはナンセンス。あそこは、個々の選手の力はあったのに連携やメンタルが不足していて、そこが噛み合ってきての急上昇。ハムはまだひとつ前の段階だもの。
一番の問題点に着手すると明言してくれたことが、何よりのモヤモヤのガス抜きです。
ぱぁっと目の前が開ければ気持ちも晴れる。
「そこさぁ、じゃあ、なーんで今までは出来んかったん？」
て疑問も湧きますが、気持ちが晴れると明るい方だけ見たくなる。人間だもの。
まあ色々あったけど、とりあえずは④で行こうかぁという気分になれた。
長い目で見て、失敗したことは改善の糧にして、地道にコツコツ力をつけよう。
注目を集めつつファンのモヤモヤも断捨離させた、新庄の見事な会見でありました。
