フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

なが〜く愛してきたパ・リーグをゆる〜く語るブログ、フィルパリです。

日本ハム中田問題 この三方一両損的収拾策の安堵感とモヤモヤ感

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「えっ!」とビックリした後に、「……まあ、十分有り得た」と妙に納得してしまう。今や大問題児となってしまった日本ハム・中田翔の、巨人への無償トレードニュース。これで収束しちゃうのか?しちゃうんだろなあ。後は潮が引くかのように、後半戦へとニュースの興味も移っていくのだろう。日本ハムも中田も巨人も少しずつの傷を負いながら、しっかりメリットもキープしている。 落語にある三方一両損(さんぽういちりょうぞん)の大岡裁きと言えるのかなあ。

だがしかし、この収拾策に対する安堵感とモヤモヤ感には、妙に中途半端さを感じてしまう。なぜかなあ? と、いうわけで、三者の損した一両と得した二両をまとめて、気持ちを整理しました(ハムには文句も多いので、イヤな方はパスしてくださいませ)。

 

日本ハム 損の一両、得の二両

近年の日本ハムの体たらくについては、球団ができた頃からファンをやってきたスタとしてもかなり忍耐の限界に近づいていていたわけです。東京時代の弱い頃から40年以上見てきて、過去にもたくさんドタバタや揉め事あった。そこも踏まえた中で、近年が一番酷い。「弱い」じゃなくて色々酷い。組織全体が、「弱いプロ」ではなくて「ワイワイやるだけの学校」。数年前から野球仲間にも愚痴ってましてね、「腐っとる」って。

 

なんか変、と感じ始めたのは大谷入団の辺りからですね。スタは東京ドームでの主催試合を必ず観戦してますが、格段に入場者が増えました。そしたら球場内での球団スタッフの人の態度が変わってきたな、と感じたのです。観客がやっと増え始めた頃の場内スタッフの人達は、常にファンを見て気を配っていて、何か聞いても一生懸命対応してくれていました。ファンが多い日は本当に嬉しそうだった。満員が当たり前のようになった頃から、若いスタッフ同士が喋りながら歩き、ファンに一目もやらない姿を見かけるようになったですね。

 

選手の方も緩んでたと思います。何年か前、移動の関係で、鎌ヶ谷で一軍が練習することがあって見学しに行きました。外野で、コンちゃん(近藤)と清宮と杉谷が守備練習してました。そりゃあ楽しそうでした。ゆるゆるで緊張感も迫力もかけらも無かった。臨時の調整練習とはいえ、ファンが大勢見てる中です。「なんだかなぁ」と寂しくなりました。先日の五輪のコンちゃんを見た時、つい、この練習を思い出したものです。

 

ほんのわずかな部分で、全体を決めつけちゃいかんとは承知しています。でも、長年見てきていると、どうしてもそういう印象と成績を結びつけてしまう。些細なマイナスイメージの蓄積で、今年こそとどめを刺されるかもと覚悟もしていたのですよ、一応。しかしながら今回は、予想の斜め上ゆくカタストロフィーぶりでしたね。もはやギリシャ悲劇(喜劇かもしれん)。「やってくれるねぇ、とことん」と感嘆するレベル。

 

ああ、いかん。文句を吐き出してしまった。気を落ち着けます、ふぅ〜。

 

【損の一両】

・チームの顔が抜けた。
・チームの主軸、唯一の大砲が抜けた。
・球団として大きなイメージダウンの事件となった。

【得の二両】

・長年の主砲を潰さずに済み、中田ファンの希望の火も消さずに済んだ。
・スピーディーな処置で、事件の印象は後半戦で薄れさせることが可能になった。
・フロントや監督のコメントは巨人側に任せ、自分達は矢面に立たずに済んだ。
・事件に至る管理手腕を追求される前に、選手思いというイメージを上塗りできた。
・残りの選手の関係性の再構築がしやすくなった。
・来季から高年俸で気難しいベテラン選手の扱いに気を遣わなくてよくなった。
・新球場で出発するチームのイメージを刷新しやすくなった(弱くてもいい)。

 

こうして見ると、先行き考えたら球団としては結構メリットがあった、ってぐらいの感じかもしれない。これで「若い未熟な選手たちが頑張って育って、キラキラ輝くまでの道程をファンの皆さんも一緒に見守ってね!」みたいなモードにしれっと変わっていくんだろうな、と予測できてしまう。今回の問題に少なからず影響があっただろうと思われる管理者の人々も、誰もきちんとした説明や問題点の分析や具体的な改善策を示さなかった。今後もことさら責任を取ることはないのだろう。少し時が経てば、彼らは他の手柄話だけを手元に置けるようになるのだろう。なんだか、今の日本の組織の典型みたいだよな。たぶん、スタのモヤモヤ感は、こんな所にあるのだろうと思いました。

 

中田 翔 損の一両、得の二両

さて、事件の当事者である中田。度が過ぎてしまった暴力癖は相当根深い問題で、本来は、カウンセリングなど専門家の援助が必要なケースではないか、と感じます。責任への恐れや被害者意識を方向転換できず、不満がどんどんストレスになる。ストレス解消方法を自分で見つけられず、澱(おり)のように溜めてしまう。溜まりに溜まった黒い澱は石油やガスと同じで、心のちょっとした隙間から噴出して、一瞬で爆発してしまう。もはや、馴染んだ景色や仲間の声もストレスを思い出させる火花でしかないのでしょう。トレードは目に触れる景色や仲間を変えるのは、有効な手段だと思います。

 

処罰が与えられないことを疑問に思う方も多いと思いますが、もし重大な処罰問題になったら被害者の選手の心理的負担も大きかったでしょう。また、プロ野球界の中では過去に暴力が当たり前だった時代もあり(すぐ近々まで)、名選手・名監督と言われる人の暴力が自慢話のように喧伝されている事情もあります。遡って問われることは無いのか、時代が変わったという基準は、中田を具体的処罰第1号として扱うには曖昧です。今回の穏便な解決方法の選択は、予想できた結果かなと思います。

 

【中田 損の一両】

・一瞬にしてチームに居場所が無くなった。
・仲間を傷つけ、一瞬にして社会的信用、面目を失った。
・絶不調の中で、新しい厳しい環境での出直しとなった。

【中田 得の二両】

・首が繋がった。
・かつての環境を変える希望(阪神移籍)が図らずも叶った。
・競争等厳しい環境だが、比較的得意なホーム球場の球団に移れた。
・努力や成果によっては失地回復の可能性がある人気球団に移れた。
・実力者が多い球団で、チームの勝敗の責任を背負わなくてよくなった。
・見える景色が全て変わる事で、凶暴な気持ちが静まる可能性が出た。

今後、中田が汚名返上できるかどうかはわかりませんが、とりあえずはこれで騒ぎは下火になり、もう一度野球に真面目に取り組むことになるでしょう。ただ、野球界でしばしば発生する問題を起こす選手については、日頃から選手間では噂になっていたという後日談が出てくることがあります。指導者が言っても治さなかったら個人の資質の問題と、割り切るべきかもしれません。ただ、心理学的・病理的問題を孕むケースもありそうで、そういうメンタルヘルスの研究も、球界で取り組まれるといいのにと感じます。

 

巨人 損の一両、得の二両

大きなトラブルを抱えた選手のトレード話に、素早く応じてくれた巨人。さすがです。年俸高額で、ポジションも既存の選手と被り、本当に扱いにくいと思う。原監督が来期も続投するか不明な中、引き受けを決定するのは今しかなかった。資金力もあり、こういう選手の扱いに慣れていて、選手の面目も潰さず手際が良い。ありがたいことです。

 

【巨人 損の一両】

・非常にイメージダウンになるトラブルを起こした選手を引き受ける。
・絶不調でケガもあり、今期中の活躍に懸念ある選手を引き受ける。
・若手にとっては余計な競争枠、起用方法にも気を遣う選手を引き受ける。

【巨人 得の二両】
・元々は人気選手で改心して立ち直れば役に立ちうる選手を取れた。
・立ち直れば東京ドームならホームランの増加もありうる選手を取れた。
・非常に後悔と感謝の気持ちが強く立ち直る可能性が高い選手を取れた。
・立ち直らせたら、球団の受容力・管理力の高さをアピールできる。
・優勝争いに向け、自チームの選手に再度の緊張感を与えられる。
・全選手、世間に対し、選手の立場を考えて支える球団だと示せた。

 

中田が今後どう変わるかはわかりませんが、現状は本気で悔やみ、拾ってもらったことに感謝していると思います。今期中に立ち直れれば、東京ドームは比較的得意で春先もホームランを打ったりしているので、チームの役に立てる可能性はなくはない。ただ、コントロールの良いセ・リーグの投手に慣れるには時間がかかるかもしれません。諸々の事情で、すぐに登録する必要があったのでしょうが、謹慎解除などの展開のスピードはちょっとモヤモヤ(これは贅沢)。とにかく、中田もなんとか切り替えて、引き受けたチームに恩返ししてもらいたいものです。