選手の移籍に関するニュースもそろそろ落ち着いてきたパ・リーグ。関連情報が流れるたびに、ファンの心はジェットコースター。そりゃもう日本人ですもの、情に棹差して生きてますもの。頼もしい選手が来れば小躍りするし、大好きな選手が去れば「立ち直れない…😭」と思うくらい落ち込むし。
特になんやかやと心中を詮索されたのが西武ファン。FAで他チームに出る選手が多いということで、毎度のように「西武ファン」がトレンドに上がったり、やれやれと溜息つきたくなることも多かったはず。どうしたって話題には目が向いてしまいますから。
でも、ちょっと胸アツになる出来事って、ひっそりと地味なニュースの中にもいっぱいあるじゃないですか。例えばこの秋、一番最初にスタが「おお!」と思った選手の去就関連のニュースがこれ。西武で引退した内海哲也がそのまま2軍投手コーチになることでした。
トレードやFAの人的補償でパ・リーグに来て、晩年を過ごした元読売の選手は結構います。パのチームに馴染んで活躍を見せてくれて、親しみが沸きました。ただ、引退した後は、ほとんどの選手が読売にそそくさと戻っていくか退団するなあって感じてたんです。
しょうがないよね、後々の世間の扱いも違うものね、って諦める。ちょっぴり寂しく感じても。だから、内海もきっと退団するか戻るかだろうなって思ってました。読売OBの堀内氏が残りなさいというコメントしたけど、それは無いだろうなって。
だって、読売は彼がすごい固い意志を貫いて希望した球団でしたものね。思い返せば最初のドラフトでオリックスの指名を入団拒否して社会人行かれた時は、中々残念でしたねえ😅。まあ当時のパ・リーグは入団拒否なんて珍しくなく、パファンとしてはね、びっくりするというよりは「…またかいな…🥲」っつう嘆息だったんであります。
内海はパがダメということじゃなく読売以外行かないという姿勢でしたしね。そこまでして入ったくれた選手がもし戻りたいということなら、読売の方でもちゃんと場を用意するでしょう。だから、引退したら西武から離れるんだろうなって思ってました。
ところが彼はごくあっさりと西武に残ったのです。「おお!」ってなります。最初は少し勘ぐっちゃったりしたんですよ。何か読売と遺恨でもあったのか、とかね。でも、そうじゃない。コメントをたどっていけば、本当に2軍コーチという地道な職種に意欲を持っていることが伝わってくる。
彼がこういう気持ちに変わっていった経緯ね、すごくいいんですよ。一度は落ち込んで、自分のことに必死になって、そうこうするうちに周りの仲間に情が移っていって。彼の様子を追うと、その心の変遷がとてもよくわかるのです。
2018年、西武から読売にFAした炭谷の人的補償として西武に移籍した内海。入団時から強い思い入れのある球団にプロテクトして貰えなかったということに、当初は本人も落ち込んだらしい。でも、ここから先が並じゃなかった。並の人間は、やっぱり自分のことだけで精一杯になりますよね。ところが彼は、苦しい中でも西武の後輩たちに何かを残そう、という気持ちになったというんです。
《引用:2022.10.24テレ朝POST記事より(下段に本記事紹介あり)》
2018年、キャッチャーの炭谷銀仁朗が西部から巨人へFA移籍。内海がその人的補償として、西武に移籍することになったのだ。
「当時は本当にショックでした。1週間暗い『ああ…』って感じで。言葉ではすごい前向きに言ってたんですけど、やっぱり未練じゃないですけど、びっくりした」(内海)
<中略>
そんな苦しい日々が続くなか、内海にはある思いも芽生えていた。
「やっぱり縁があってライオンズに移籍させてもらったので、ジャイアンツでやってきた経験だったり、若い頃に先輩に教えてもらったことだったりっていうのを”伝えていく”というか。そういう役割っていうのも求められてるんじゃないかなって」(内海)
西武の若い選手達を背中で引っ張ろう。そう思い立って、毎日朝早くからグラウンドに姿を現し、黙々とトレーニングを続けた内海。かと言って孤高の存在になることはなく、常に周りの選手達を気に掛け、声を掛け、いつしか厳しいけれど優しい、掛け替えのない先輩として慕われるようになっていきました。彼のことを「お父さん」と呼ぶ渡邉勇太朗は筆頭ですね。
そして、去年は選手兼任でコーチも担当。スタは彼の兼任コーチとしての1日を追った球団公式動画を見て、すごく感心したものです。自分の練習をひとしきり終えた後にまた熱心に若手選手のトレーニングに付き合う姿。その中で、グラウンドですれ違いざまに與座に声を掛けたり、本田を「ポンちゃんええなあ、なんでもできるなあ」と褒め続けたりする姿が印象に残っています。
その頃の與座と本田はまだ成績もイマイチで、1軍確定さえ危ういと見られるポジションにいたのです。それが今年は、先発と中継ぎで中心選手になる大躍進。チームを最下位からAクラスに押し上げた原動力になりました。そういう姿に、内海も心底コーチのやりがいを感じられたんじゃないのかな。そして、今年は伸びきれなかった勇太朗、彼が2軍で燻っている間は側を離れることなんかできないよ、って思ったんじゃないのかな。
読売というハイステータスチームを背景に持つ内海を、西武の2軍コーチに迷うことなく残らせた、西武というチームの野球に対する情熱と若い選手達のまっすぐな思い。そして、今度は彼らの背中を押してやりたい、という内海の熱い決意。
出ていく選手ばかりが大きく騒がれる中ではほとんど思い出されないけど、ひっそり地味な内海お父さんの " 残留 " は、とっても素敵な西武のチーム愛の物語だよね。そう思っているスタなのです。
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<西武ライオンズ公式内海哲也引退特設サイトのメッセージコーナー>
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