2022年度パ・リーグベスト9選手の1年振返り。長い戦いを彼らはどう乗り切ってきたのでしょう?。一塁手は3年ぶりの選出、西武・山川穂高です。zuttoウォッチングシリーズ対象でもあったので、ちょっと詳しめにご紹介。
山川穂高(西武・一塁手)
他受賞:本塁打王、打点王
総評
3年ぶりに受賞したほたぴ(山川)。去年と一昨年の2年連続イマイチな成績で、今年はもう最初から意気込みが違ってました。練習を頑張るだけでなく、コメントも具体的で貪欲。本塁打王はほぼ宣言奪取と言えます。キャンプから本塁打にこだわり、開幕時からその力を見せつけて、大砲山川ここにあり、とアピールし続けます。今年はパの打者は皆苦しんで本塁打が伸びず、ほたぴは独走でのタイトル奪取でした。飛ばない統一球時代に独走で本塁打王を取ったおかわり君(中村剛也)とイメージが被りますね。
column.sp.baseball.findfriends.jp
後半はチームが激烈な優勝争い。得点力の低い打線の中で彼に掛かる負担は大きく、勢いは少し息切れ。が、それでも最終盤は「やっぱりすごい」と思わせる打撃をみせて、Aクラス入りに貢献しました。ピンポン球のように飛んで行くホームランは、本当にワクワクさせてくれる。今年は最後まで「どすこ〜い!」も元気。彼が1本打つだけで場内が明るく沸き立ちます。文句なしのベスト9選出。
春先に肉離れを起こし、その後は足に気を遣いながらプレーする状態。それでも、一昨年の捻挫の時のような無理はせず、早めに慎重に対処することでフォームの崩れなどを防ぎ、その辺りも経験を積んで大人になった感じ。
精神的な成長は、プレーだけでなく周囲への対応にも表れました。彼は何事にも忌憚なくコメントし、しばしば鋭いコメントを発します。でも、発言内容は冷静で理詰めだし、何より元来のキャラが朗らかで優しく公平なので、言っていることに説得力がある。今年は特に他チームの打者たちが彼を慕い、試合前にはアドバイスを求めて寄ってくる姿が目立ちました。試合以外でもとにかく明るくて振る舞い、圧倒的な存在感があったほたぴです。
打撃成績概要
年明け早々にコロナに罹ってキャンプも出遅れたほたぴ。しかし、ずっと意識していたフォーム固めやトレーニング方法が功を奏したようで、開幕3試合は最高のスタート。ところが4月すぐに右足太腿を肉離れしてしまいます。これは不幸中の幸いで軽く済み、2週間ちょっとで復帰。5月まではホームラン量産の上、打率も非常に高い絶好調。6月は打率が急降下したもののホームランのペースはなんとかキープ。夏場も安定して打っていきました。ラオウ(B杉本)やギータ(SB柳田)、助っ人外国人選手らのライバルたちの不調もあり、本塁打王レースは独走状態に入ります。9月に入ると疲れに加え、チームが熾烈な優勝争いに加わったことで重圧が大きくなったこともあってか、今年一番の絶不調に。しかし、本塁打に関しては影を踏む者さえおらず、打点も最後の最後で猛追するマサタカ(B吉田)を振り切りました。
データは下記引用の個人データサイト「データで楽しむプロ野球」さんを参考にします。
■資料1:2022年シーズン成績詳細
※「データで楽しむプロ野球」より
■資料2:2022年シーズン全打席成績
※「データで楽しむプロ野球」より
■資料3:2022年シーズン対戦成績(対投手)
※「データで楽しむプロ野球」より
対戦成績は(資料3)を見ると、対チーム、対投手とも、得手不得手が極端な感じ。パの中では、対日本ハムと対ロッテの打率の低さが目立ちます。この2チームに関しては中継ぎ陣に打てなかった投手が多いですね。対戦が少ない中継ぎ投手が多かったのかな。でも、ロッテ相手にはホームランはしっかり打ってます。ハムに関してはホームランも少なくて、本当に苦手だったみたい。
左投げの技巧派タイプの先発は結構よく打ってます。苦手なハム投手陣の中でも、防御率がいい加藤もほたぴは良い打率。M小島、B山﨑福也、E早川などはカモにしてるし、打席は少ないけどH和田、H大関などもちゃんと打ってる。明確に苦手感があるのはB宮城でしょうか。右先発にはあまり打率が高くない。ソフトバンクの千賀と石川で稼いでる。あとは中継ぎ陣を打って、対右投手打率の帳尻合わせしてる感じですね。
今年はもうはっきりホームラン狙いのバッティングを徹底し、打率に関しては欲を出さないほたぴでしたが、それでも相手の主戦投手をしっかり打ってるのはさすがです。
守備成績概要
守備ランクはNPBサイトの西武チーム内個人守備成績のリンクを貼ります。DHもあったので規定守備機会には届かず、ちょっぴり失策数が多かったかな。日本ハムの清宮といい勝負。見ていればグラブ捌きは柔らかいし、上手なんですけどね。送球が怪しい時があったかな。でも、観戦に行くといつも良く通る声で仲間に指示したりピンチで鼓舞したりてて、「ほたぴ偉いなー」って感じますよ。
<2022NPBパ・リーグチーム内個人守備成績>
https://npb.jp/bis/2022/stats/idf1_l.html
春季キャンプ〜3月
ほたぴはずっとウォッチするzuttoシリーズ(途中挫折😅)に取り上げて、去年のオフから春先までの記事があります。一昨年去年の不調を乗り切るために彼がしてきたことを詳細に紹介しているので、ぜひそちらもご覧ください。
※昨年オフ〜3月の詳細記事
自主トレ中にコロナ感染してしまい(無症状)、キャンプは所沢から。ほぼ1週間遅れで宮崎の南郷キャンプに合流。一昨年、去年と捻挫の後遺症からバッティングを崩して苦労したほたぴ。去年秋の練習からは、「ケツ(お尻)」を意識することを一貫したテーマとしていました。
また、大相撲の初場所で御嶽海が優勝したのですが、彼が優勝した年はほたぴがホームラン王になっているということで、「こいつは春から縁起がいい」なんて話題もありました。しかし、今年も当たっててすごいジンクスです。
こうして、オリックスとの開幕戦を迎えると、初戦は山本由伸に抑えられたものの、後の2試合では見事なホームラン。さらに次の日本ハムとの初戦でも3試合連続ホームランを放ちました。3本ともすっごい当たりだったんですよねー。本当にオフのトレーニングの成果が出て、今年は完璧に仕上がったんだなあとファンを驚嘆させました。
しかし、寒い時期に体が動き過ぎるのってちょっと危ういんですよね。ほたぴも状態が良過ぎるのが裏目に出たのか月末の日本ハム戦で軽い肉離れを起こしてしまい、しばらく離脱することになります。
余談ですが、札幌ドームでは去年も同じようなケガをしたんですよね。復帰後の札幌の試合(5月)では、金子がケガしたこともあり、真剣にお清めの塩を撒いてる姿が評判になりました。
前半戦
4月〜オールスター前
3月末の日本ハムとの試合で右足を痛め、詳しく検査したら太腿肉離れだった山川。そのまま抹消となります。開幕直後のチームにはすごく痛手で負けが込みましたが、辻監督は「走れるまでは使わない」と慎重。一昨年の捻挫時は焦って復帰して尾を引きましたものね。
しっかり治す対応が功を奏したのか、こじらせず 19日には復帰できて即安打。3日後にはホームラン。その後は5月まで快調に飛ばしました。3、4 月の打率は .365 でホームラン8本、ケガ離脱がなかったら2桁打ったかも。
5月も引き続き好調です。 .321で9本を打ち、月間MVP獲得。受賞インタビューでは、成績に関しては「まあまあ」みたいな応答。ケガの間の調整はフォームが変わらないよう心がけていたそうです。今年は三振率が良くなっているという記事もありました。ゴールデンウィークは特にもう大爆発でした。また、沖縄での試合を現地観戦しましたが、やっぱり一番目立つ人気者でしたね。
※GW大活躍動画
※三振率改善の記事
※月間MVPインタビュー
※沖縄開催試合のフィルパリ観戦記
6月から7月前半、慣れない相手との交流戦があったり、さすがにそろそろ疲れが出る頃だったりからなのか、少々打率が下がります。それでもホームランだけはペースが落ちませんでした。彼のホームラン、6月現地で大きな一発を見られましたが、同行した観戦初心者さんは弾道が高過ぎて目で追うことができなかったです🤣(その後ラオウ杉本のライナーホームランで認知)。
打率は下がれどホームランは減らず、という6月の成績。むしろ、今年の打撃での初志貫徹ぶりを示したかもしれません。その初志をあらためて紹介する記事もありました。最初から打率に欲を持っていないのです。この初志があるから、今年は打率が下がり始めても焦ることがなかったのでしょう。
上の記事の最後には、「最高の準備をする」という心がけも紹介されています。準備と言えば、ほたぴは試合前はいつも、チームで一番先にグラウンドに姿を現してアップを始めます。ビジターチームの練習が終わるか終わらないか、ぐらいにはもうベンチの前で柔軟体操してる。その時に、ビジターチームの選手たちがワヤワヤとほたぴの周りに集まり始めます。
ああ見えて理論がしっかりして見識が高く、朗らかなお喋り上手。今年は、新庄監督が万波に教えてやって欲しいと出向いた姿が話題になりました。万波にはその後もアドバイスしていたし、日本ハムとの試合では周りに数人のハム若手が座り込み、ほたぴはまるで、説法を説くブッダのような光景も。他チームでも、彼の周りにはしょっちゅう相手選手が寄ってくる。みんな、ほたぴとお話したい。スタも現地で目撃しました。
⚾️ 西武・山川パ・リーグのブッダと化す
— スタジエンヌ・裕子 (@Stadienne) 2022年6月30日
試合の度に説法を拝聴したい相手チームの選手が集まってくるほたぴ https://t.co/0LbDv1YY2C
オールスターゲーム
ファン投票は両リーグ最多得票で一塁手部門に選出。インタビューではオールスターのイメージを「お休み」と軽口叩いていたほたぴ。しかし、実際は大張り切りでした。ホームラン競争でバテバテになり、本番ではホームランを放ち、サードを守る。しかもベンチでは佐々木朗希など次々に若手選手を掴まえると、一緒にカメラの前でフリップ芸を披露。八面六臂の大活躍で圧倒的な存在感を示します。詳細はフィルパリ記事をどうぞ。
※第1戦振返り記事
※第2戦振返り記事
後半戦
7月末のソフトバンク3連戦から始まった後半戦。よっぽどオールスターが楽しかったらしいほたぴは、その勢いか、12打数7安打の爆打ちでスタート。8月も春ほどではないけれど、2割8分に近い打率。ホームランも、3戦連発を放ったり苦手山本由伸(B)捉えたりして、相変わらずの安定ぶり。彼の活躍もあって、波に乗ったチームは一時首位に立ちました。
※3戦連発記事
※由伸から1発の記事
※由伸から1発動画
ところが、3チームがゲーム差なしで首位に並んだパ・リーグで、ここから優勝争いの正念場という9月。ほたぴのバットからの快音は、ぴたりと止んでしまいます。8月までとのあまりの違いに、辻監督も首を傾げるほど。優勝争いのプレッシャーなのか?。何かの原因で去年までに戻ってしまったのか?。
チームは他の打者も今ひとつで、得点力はひとえにほたぴに掛かっている状態。彼の不調でチームも急ブレーキ。要因はそれだけではないけれど、あれよという間に優勝圏外に弾き出されてしまいます。それでも、CSだけは逃したくない西武はここからしぶとく粘りました。ほたぴのバッティングもちょっとだけ上向いてきます。
20日に3安打を放つとそこからはコツコツと安打が続きます。チームもそこから連勝し、1週間後にはなんとかCS確定。そしてほたぴは、10月19日の最後のソフトバンク戦で「これぞ山川」というバッティングを披露します。ソフトバンクが勝てば優勝という試合。西武は何度も自分達の本拠地で胴上げを見せられているチームですが、この日は違いました。鉄壁のリリーバー藤井からほたぴが放った意地の一発は、劇的なサヨナラ2ランホームラン。語り草になるシーンでした。
ポストシーズン
CS(クライマックスシリーズ)
1stステージの相手は2位になったソフトバンク。西武がリーグ優勝した年にCSで負けていますから、やり返したいところです。ほたぴも開幕前に意欲を語っています。
しかし、短期決戦のソフトバンクはやはり強く、西武は早々と先発が打ち込まれて敗退。ほたぴも勝負を避けられたりマークされたりでほとんど打てず。第2戦9回に一矢報いる1発を放つだけにとどまりました。でも、敵地での焼け石に水の1発にしっかりどすこいパフォーマンス。去年は途中からどすこいしなくなって寂しかったけど、今年はどんな時でもやってくれました。メンタルもひと回りたくましくなったほたぴです。
オフ
ほたぴはSNSの使い方が本当に上手なのですが、ここに来てインスタグラムでの練習生配信なども始めています。とあるアンケートでは、プロ野球選手の面白いSNSの第1位に。真面目なものを配信したり本当に砕けたことを言ったりで、確かにめちゃ面白い。
また、来季のバットの仕様を変えたというニュースも入ってきています。ヤクルトの村上選手などを参考にして軽めにしたとか。今年終盤戦の疲労も考慮したのだそうです。選手が使う用具の流行スタイルもわかる面白い記事です。
まとめ
2022年度パ・リーグのベスト9一塁手、西武の山川穂高。パを代表する長距離砲が戻ってきました。美しい、という表現にならないのが彼のホームランの魅力だな、とスタは感じてます。あくまで強引で豪快。ボール球だって山川にしかできないようなスイングでスタンドに放り込んでしまう。痛快です。
そして、今年のほたぴはいつも楽しそう。悔しがってる時でさえ楽しそう。試合前の練習からほたぴがグラウンドに出てきた瞬間から、野球の愉快さが場内に広がっていきます。空振りでもスタンドは沸く。守備の時や走者の時には、相手選手とのユーモアたっぷりなやり取りでニヤニヤさせてくれる。
ただ平和なだけじゃないですね。色々な問題に関するコメントをスパッと言うところもある。でも、色々な面からの見方をしっかり考え、適正な判断力を見せたユーモアを交えながらのコメントなので角が立たない。誰よりも負けず嫌いでプライドも人一倍高いのに、何をやっても朗らかで剣がないのが彼の美点です。
素晴らしい存在感を示したほたぴ。でも、プロ野球界全体から見ると村上くんに話題をさらわれまくった感は否めない。来年はもっと注目される活躍を、と言うのは本音に違いありません。森が抜けてますます彼への依存度が高まる西武打線を牽引して、今年を上回る成績を残すのは至難の技ですが、高みを見せてもらいたい。
オフの西武は移籍問題で揺れ、あえて触れませんでしたがほたぴにも色々噂が飛び交いました。そんな先の憂いを忘れさせるような活躍をして、西武ファンを喜ばせてあげてほしいほたぴです。