フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

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【寅威さん】 福也、来たる  (上)【復活さちとらバッテリー】

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*【寅威さん】は現日本ハムファイターズの伏見寅威選手のお話を読み物風に書くシリーズにしようかなと思っています

 

🔸福也のFA移籍


 福也(さちや)が来た。2023年11月25日、オリックス・バファローズから日本ハム・ファイターズへとやってきた。FA移籍である。その決心に、一番喜びを噛み締めていたのが寅威さんだった。

 同じくバファローズの中心選手だった寅威さんは、2022年日本シリーズ優勝直後の11月、熟考の末に故郷北海道のチームである日本ハム・ファイターズへとひと足早くFA移籍していた。その1年後、古巣でバッテリーを組み、ファンから「さちとら」という愛称さえ付けられたほどの相棒投手だった福也が、同じファイターズを選んで移籍してきてくれたのである。

 山﨑福也は寅威さんの2歳年下の投手で、2020年頃、福也が少し伸び悩み、寅威さんはアキレス腱断裂という大けがから復帰しようという、ともに苦労していた時期に、ふたりはバッテリーを組むことになった。そこから手を携えて頑張り1軍定着を勝ち取ったから、お互い相手に思い入れが深い。

 その福也が去年2023年に初めて2桁勝利を挙げて自己最高の成績を残し、FA市場で大人気となったわけである。資金に余裕のあるチームがいくつも手を挙げ、好条件と大金をどん!と積む。提示条件のヒートアップで沸く中で、最後の最後にファイターズが争奪戦に加わったというニュースが、ひっそりと伝えられた。「電撃参戦」などとちょっと煽った言い回しもされたが、いかんせん遅ればせにもほどがあるように見えた。

 それでなくとも、ファイターズといえば選手年俸などの金の使い方がケチ……もとい、超締まり屋な球団で有名だったのである。マネーゲームはいっさいしない。FA選手など滅多に獲得しない。寅威さんはその滅多にないFA選手の久し振りの獲得で、年俸にしても球団はずいぶん気張ったじゃないか、と言われていたものだ。なので、2年連続で福也に手を挙げただけでも世間はちょっと驚いた。去年新しく自前の球場であるエスコンフィールド北海道を運営するようになったのだが、それでだいぶ儲けが出たのだなあ、と感心された。とはいえ、よそに太刀打ちできるほどの条件提示は無理だろう。そう思う人がほとんどだったに違いない。

 争奪戦に参戦したのは6球団もあったという。セ・リーグのヤクルト・スワローズと讀賣ジャイアンツ、DeNAベイスターズ。パ・リーグではオリックス・バファローズ、ソフトバンク・ホークス、そして日本ハム・ファイターズ。福也は交流戦の度に目を輝かせて打撃練習する姿が評判になるくらいバッティングが好きで、本当にヒットを連発するくらいそのセンスも抜群だから、当初は投手が打席に立てるセ・リーグチームが本命と見られていた。パ・リーグなら、提示金額面ではホークスが破格だし、今や優勝争い常連となったバファローズにだって愛着が無いはずもない。

 ところが、ふたを開けたら彼が選んだのはファイターズだったのである。発表間際にひっそりと噂は立った。SNSに「新千歳空港で紙袋を提げた福也を見かけた」と一般の方の書き込みがあり、フェイクか否かでわやわやした直後、球団が入団合意を発表したのである。しかし、スポーツ新聞のスクープなどは一切なかった。交渉開始の記事も小さかったが、情報の漏れ方さえ地味だった。

 後々の本人の動機を聞けば実は多くの縁があり、この選択が必然だったと思えてくるが、途中経過の段階では、ファイターズには大人気の選手を引っ張り込む決定的な切り札は何も無いように見えていたのだ。だから、移籍が公式に発表されたその瞬間は、ケチ……もとい、超締まり屋球団のハムがFAの目玉選手を掻っさらって行ったことに、誰もが今度は本当に驚いた。

 その驚いた "誰も" の中に、寅威さんもいたらしい。

 

🔸寅威さん嬉しさが溢れ出る


 福也が来た。そのことを、寅威さんも世間の人々と同様、球団の発表で知ったという。一番親身に心配してくれる先輩への事前報告を、福也はどうもあえてしなかったらしいのである。

 ファイターズと福也の交渉は、公のニュースでは随分と気を持たせた所で終わっていた。ファイターズ側が一度大阪に出向いて本人と話し合いをしたが、「もう大阪に行くことはない」と言い残して帰途についたらしいというもので、脈無し撤退の捨て台詞にも思えてしまう。その後は、例の空港SNSが流れるまで動きが見えなかったのだ。

 さあ、福也は来るのか、来ないのか。顔には出さねどきっと内心ヤキモキしていたに違いない寅威さんは、後輩の人生に関わる決断についてなまじな期待をせぬよう、自分に言い聞かせたりしていたかもしれない。移籍決断を伝える真夜中のネットニュースを見た時でさえも、まだ半信半疑だったかもしれない。FA関連では直前に誤報が流れたことも実際にあったのだ。

 しかし、最初の一報から半日過ぎたその日11月25日の午後、球団から公式に入団決定が発表されたのである。

 

山崎福也 日本ハム移籍決断 6球団による大争奪戦決着― スポニチ Sponichi Annex 野球

 

【日本ハム】山崎福也の獲得を正式発表 FAでの投手獲得は球団初 6球団争奪戦を制す - スポーツ報知

 

 こうして寅威さんは、願っても叶わぬほど喜ばしい知らせをようやく受け取ることができた。いわば人づてに。おそらくは多くのファンと同様、スマホの画面越しに。どんなに嬉しかったことか。もちろん寅威さんはしっかり者のオトナなので、心の奥のウキウキを表に出したりは………………しまくった。

 まずは球団公式発表直後に、SNSのインスタストーリー(24時間のみ表示)で福也に向けてメッセージを送った。メッセージと言っても、昔のふたりの練習写真に呼び名の「さち」のひと言とハート指の絵文字を添えただけ。その短いひと言がむしろ、胸いっぱいな気持ちや多くの言葉がいらない関係を伝えてくる。頬をちょっと紅潮させ、満面の笑顔で投稿する寅威さんの姿が目に浮かぶような気がしたものだ。

 福也の入団会見の日には、会場となったエスコンフィールド(以下エスコン)の通路でふたりのツーショットを撮ることもできた。会見の報告を伝える福也のインスタ写真の最後に、そのツーショットが添えられている。トレードマークの肩幅がさらに広く見えるダウンジャケットを羽織った私服姿の寅威さんは、ベビーフェイスのくせに自分より頭半分背が高く、ビシッと決めたスーツ姿の後輩の横で、会見を終えたばかりの後輩以上に嬉しそうに胸を張っていた。

 

www.instagram.com

 

 この時の遭遇につき、その時間にたまたま球場にいたから……と、寅威さんは後で語っている。まあ、福也のいる場所に実にタイミングよく居合わせてしまう「たまたま」は、その後もちょいちょい発生するのだが。

 そんな嬉しさもろ出しの寅威さんの様子を見て、たぶん福也も楽しくてしょうがなかったに違いない。 なにしろ、入団会見後の球団動画インタビューで発表前に先輩に連絡を取らなかったことについて聞かれ、「サプライズで」と、思い出し笑いを堪えながら答えていたのだ。一番喜んでくれるに違いない人を、ちょっと焦らしてびっくりさせたかったってわけである。 なにそれ〜。もう、婚約指輪かなんかかな?。

 入団会見では、新庄監督から、エスコンでの本拠地開幕戦はふたりのバッテリーで、というサプライズ発表もあった。12月9日エスコンで行われたファイターズのファンミーティングに登場した際にこの発表を聞いた時の気持ちを聞かれた寅威さんは、「そりゃそうだろう、と思いました!」と、テストで花丸をもらった小学生のようなドヤ顔を披露した。拍手を送ったスタンドのファンたちは、「おお、おお、本当によかったねえ」と、なんだか参観日の保護者の気持ちで目を細めていたような気がする。

※2023.12.9たまたま撮影できたドヤ顔の瞬間

 

 会見の後は両者本当に多忙で、特に福也は、移籍の手配を進める傍ら、大阪でのイベント等の義理を律儀に片っ端から果たしつつ、その合い間はびっちりトレーニングのハードスケジュール。SNS等の情報を見ていたら疲弊しないのか心配になるほどだったが、しかし、なんだか本人はけろりとしている。こういう時、根っからのせっかち人間は、むしろイキイキし始めるものだ。そして福也は、紛うかたなき筋金入りせっかち人間なのであった。

 とはいえ、あの忙しさでは、この後のさちとらは自主トレかキャンプまでお預けだろう、とファンは思った。油断した。ファンの興奮がひと息ついて冬眠に入りそうなその時、横っ面をはたいて叩き起こすような告知を福也が出したのである。

 年明け早々にトークイベントをやるという。その相手は寅威さん。

 

🔸さちとら、さちとらを語る


 告知は師走早々の福也のインスタ匂わせから始まった。自身がメインのトークショーを開催し、誰かをゲストに呼ぶらしい。だが、1月10日という日にちと開催都市が埼玉県大宮市ということ以外は詳細後日。どうも福也は気を持たせるのが好きらしい。ファンは誰が呼ばれたのかが気になってしょうがないが、開催場所の大宮という街が微妙で憶測を迷わせるのだ。そこへ行きやすいのは誰なのか、どうもよくわからない。

 その告知インスタは、本人がスマホの画面を嬉しそうに眺めながら片手を上げてガッツポーズをしている写真が背景だったので、もしや寅威さんかも?と思った人は少なくない。ただ、告知の時は寅威さんは北海道にいたし、開催日の辺りは例年なら関西以南で自主トレに入るのが常なので、果たしてトークショーのために関東に寄るだろうかという疑念があったのだ。だから、数日後の追加告知でやっぱり寅威さんが相手だと判明した時には、ファンが大いに沸き立った。

 バファローズ時代、ちょうどお互いに崖っぷちの中で支え合う姿がどこか特別な結びつきを感じさせ、「さちとらバッテリー」とファンの間で人気が高まっていったふたり。選手の素顔を見せるのが巧みなバファローズ公式のSNSや動画の中でもお互いによく意識し合っている様子を見せ、それがまた特別感を強めていたのだが、だからといってふたりの対談が組まれるとかグッズが出されるとか、コンビで押し出されるようなことはなかった。あくまで、ファンたちが関係性を観察しては伝え合うような、知る人ぞ知るという感じの特別感だったのである。

 それがとうとう、本人たち発信によるふたりのトークショー開催に至ったのだから、皆が色めき立つのも無理はない。キャパの小さな会場で枚数が少なかったチケットは、高額にも関わらず発売即文字通りの秒殺。運よく入手した人も、不慣れな運営に直前まで色々ギクシャクと不便を被ったりもしたが、イベントは無事開催され、大成功だった。会場のファンは開始までのギクシャクもすっかり忘れ、心底満足した。
(内容は下段別記事参照)

 


 初めての公の場でのふたりのトークはあまりにも「さちとら」が「さちとら」していた。あの時はああだった、この時はこうだった、と、エピソード当時のお互いの行動や心情を話してくれるたび、内容がほぼほぼファンの観察通り予想通りだったし、話し方やお互いへの優しい眼差しまで、何もかもが「さちとら」だった。 

 意外にも積極的なのは福也のほうで、ふたりのエピソードをみんなに聞いてもらいたくてしょうがない。前のめりで早口で目をキラキラさせて、司会の人の誘導が待ちきれないといった風情なのだ。水族館でご褒美のお魚を待つカワウソよりかわいい。寅威さんのほうは、そんな福也を見て愛おしさが増さないないわけがない。目尻の笑いジワが耳まで届きそうなほど柔和な笑顔で無邪気な相棒を見守り、時々肩透かしのイジリを混ぜたりしながら福也の反応を楽しんでいる。

 会場のファンは、自分たちの妄想かもと思っていた「さちとら」が、ちっとも妄想なんかじゃなかったと確信し、彼らがふたりセットで魅力の化学反応を起こす様を目の当たりにでき、絶対に前世はほんとの兄弟か夫婦だったんだろうなあ、と胸がいっぱいになったと思う。

 それから、このトークショーでは、主役のふたりにも「さちとらの自覚」みたいなものが芽生えたような気がするのだ。お互いについては、あの会場での相手のコメントを聞いて、あらためて強固な相性の良さを確認できたに違いない。そして、ファンについても、間近でファンの熱量を感じることで、「さちとら」がどれほど浸透して理解され愛されているかを実感したように思う。

 要するに何が言いたいかというと、このトークショーは、彼らにとってもファンにとっても、「イメージとしての『さちとら』が実存としての『さちとら』に変わったエポックメイキングな瞬間だった」って言いたい(話を大袈裟にしたいタイプ)。

 とにもかくにも、このトークショー以降、「さちとら」という言葉は新聞やテレビのメディアにも当たり前のように登場するようになった。当の本人たちもその話題なら何回でも楽しそうに話すから、さちとらインタビューがひきもきらない。さらには球団公式も、彼らの人気に味を締めて次々さちとらグッズを売り出している。情報や物品が一気に増え、ファンから嬉しい悲鳴が上がるほどだ。

 トークショーが終えた翌日、福也はファイターズの2軍施設鎌ヶ谷スタジアムで取材を受けていた。そこにも寅威さんはいた。今年から自主トレ場所を鎌ヶ谷に移したのだが、福也との遭遇はやっぱり「たまたま」だったらしい。この後福也は関西へ戻り、しばしの別れとなる。

 再会は、1月の終わりの合同自主トレから2月の春季キャンプ。ここからが本当の意味での「さちとらバッテリー」復活の道。いよいよふたりが歩み出す。

 

<続く>

 

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