フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

なが〜く愛してきたパ・リーグをゆる〜く語るブログ、フィルパリです。

【第5回WBC】最高なJAPAN代表と最高な優勝はなぜ生まれたか①【周辺環境の考察】

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 なんだか夢のように終わるんですよね、いつも。WBC優勝って、いつだって余韻に浸らせてもらえません。喜び爆発のシャンパンファイトで大騒ぎしても、選手たちは寝る暇さえなく早起きし、まるで日帰り出張みたいにそそくさと自チームに戻って行きます。家族みたいだった仲間が、翌日にはもうライバルです。

 荷ほどきする暇もないほどすぐに、会見したり仕事をしたり練習したり。普通の人の1週間分くらいが詰まった2日間。疲れや眠気を感じる暇さえなさそうで、スタはいつも、この優勝から帰国に流れにWBCのハードさを一番感じたりもします。

www.nikkansports.com

 本当に素敵な優勝でした。日頃野球に興味のない人たちまで目を向けてくれた1ヶ月。ちょっぴりうんざりした人もいたでしょうけど、それでも「WBC面白かった!」って言ってくれる人が多かった。今回は、特にライトな層に「野球面白いね!」って思えてもらえるチームであり、優勝であったことが素敵。

 どんな代表チームもたいていは、「うーん、ちょっと」っていうところが出るものですが、今回はほとんど粗(あら)がなかったですもんね。毀誉褒貶の起こる隙がなかった。これ、大きい。安心して手放しで誉められる。それだけレベルが高いチームでした。

 なんでこんなに素晴らしい代表チームが生まれ、絵に描くよりも見事な優勝ができたのか、その理由をいくつか考えてみました。思いっきり妄想なところもありますが、広い心でご容赦くださいませ。

 

 

 

■早くからの組織のまとまり

 今回の代表チームの成功の要因として、まずは環境面の整備を挙げておく必要があると思います。その第一は国内での体制です。

 「侍JAPAN」として代表チームが常設化された2012年以降、トップであるプロ野球選手の代表が参加した大規模な国際大会は、実はさほど多くありません。五輪では競技として除外されたり、近年のコロナの影響もありますね。

 そういう中で、2013年WBC、2015年プレミア12、2017年WBC、と来て、やっと2019年のプレミア12と2021年に一時的復活した五輪で優勝できました。早めに監督やスタッフを決めてロングランでプランニングしていく方式が、ようやく実を結んだと言えます。

 今回の代表チームの監督に、栗山英樹氏の就任が発表されたのが2021年末。もちろん代表常設化以前のせわしなさよりはずっとマシですが、本番まで1年ちょっとは長いようでいて意外にすぐ過ぎてしまう期間です。でも、この人選は実はもっとずっと前から既定路線だったんじゃないかな、ってスタは踏んでいました。

 栗山代表監督就任発表は日本ハム監督辞任の直後。そういうこともあってか、就任会見などでは「想像もしていなかった」と栗山氏は述べています。でも、スタはちょっと捻くれモンなんで、「んなこたーねーだろー」って思っちゃうわけですね。

 コーチ経験もなかった栗山氏が日本ハムの監督に就任して采配経験を積み、大谷翔平の獲得と二刀流育成に成功し、彼の力で日本一の監督になるという成り上がりを体験したわけですよ。それで「もしこれが世界一でショーヘイが中心の代表チームなら……」って想像しないわけねーだろー、と思っちゃう(笑)。

 さらには、日本ハムとテレビ朝日や広告会社の電通の結びつきを考えると、力を付けた日本ハム勢が中心になっていつの日かJAPAN代表チームを率いる、という構想ってかなり昔から周辺にはあり、細く長くコツコツと路線を引く努力がなされていたんじゃないかなっていう想像もしちゃうんです。

 テレビ朝日って昔から民放では随一の高校野球放送局。それがプロ野球とも結びついた一番最初が日本ハムで、週末のデーゲーム中継なんかを定期的にやってくれるようになりました。当時はテレビは読売とセが中心で、パの定期的なテレビ中継はほんとにありがたかったっけ。

 そういう中で、栗山氏はまずは高校野球関連からテレビ朝日と関わって行きましたね。日本ハムではすれ違ったのにダルビッシュと仲良しなのは、高校野球の時からの関係ですね。そして、その後コーチ体験もせずに日本ハムの監督に就任した時には、知らない人は「えっ?」て思ったかもだけど、見ていたらすぐにテレビ局の仕事を介してのつながりだなって感じたはず。

 それから、電通は日本ハムのエスコンフィールドの開発でも手を組んでいます。つまり日本ハムと電通は一蓮托生です。チームの方向性や影響力の拡大にも強力な後ろ盾になっているはず。日本ハムがJAPAN代表の中心になった暁には、惜しみなく協力することはもう決まっていたと思います。

www.dentsu.co.jp

 

 JAPAN代表で小久保監督の後任が稲葉監督になりそのまま日本ハム路線が継続したことについては、何がしかテレビや広告会社の力が関係してないはずはないだろうな、って、妄想癖のあるスタは考えています。

 今回、メジャー組の参加がことのほかすんなり行ったのは、もちろん栗山監督の人柄もあるのでしょうが、後ろ盾の組織の調査力や根回しの準備の力も大きかったに違いないって思うんです。侍ジャパンの組織と栗山氏個人の1年ちょっとの努力だけじゃなかなか厳しかったはずだと思う。

 まあとにかく、この成り行きはものすごい深謀遠慮で拓かれてきた道程なんじゃないですかね。そして、稲葉監督の優勝も大きかった。この成功で誰憚(はばか)ることなくJAPANのハム路線は継承できたことでしょう。

 ノウハウも崩されることなく後任の栗山監督体制に渡っただろうなって思いますし、招集されたコーチたちも代表像について意思統一ができてるし、最初からすごくかっちりプランニングして行けたに違いない。

 この素早く強固な組織としてのまとまりが、今回の代表を考えた時に、まず最初に大事なところだったと思います。

 

■メジャーの風向き

 

 次の環境的な整備に、メジャーのWBCへの風向きが急激に好ましい方に変わっていた、ということがあります。これにより、日本人メジャーリーガーの参加が、チームのことを後回しにするエゴではなく理解すべき当然の気持ちとして捉えられるようになり、少なくとも表向きは快く認められました。

 あんなに冷ややかだったメジャーがWBCを無視できなくなった理由は、まずはもちろんお金の問題があります。各国の代表が集い、世界で盛り上がる大会の収益の可能性が、メジャーが本腰を入れてもいいと試算できるレベルに達してきたのでしょう。

 WBCのスポンサーのほとんどは現状日本企業のようですが、日本が決勝まで行けない大会が続いても、見限ることなく後援してきたのはすごいなと思います。
 ※この収益配分については日本プロ野球選手会が問題提起したりなかなか大変なのですが今回はこの点は置いておきます。

 こうして段々と「儲かる商売」になってきて、もっと盛り上げていきたくなったとしたら、メジャーの選手、特にアメリカの選手はほぼ参加しない、というしょぼい大会にするわけにはいきません。球団も選手の参加を後押ししてね、って機構や選手が圧をかけるムードになってきていますよね。

 そして、もうひとつの大きな理由に、小国のメジャー選手たちの頑張りがあったと思います。まだまだ見下された大会だった頃から、メジャー選手としてアメリカ人扱いされるけど実は内部では差別なども感じていた他国の選手たちが、プライドを顕示できる場としてWBCに本気で取り組んできました。

 特に中米の選手たちの頑張りは素晴らしかったですよね。ドミニカやプエルトリコなど、アメリカの州より小さいくらいの国の選手たちが真剣に勝とうとして戦って結果を残しました。それから、ヨーロッパなどにも、例え自国が強くなくても参加して力になろうとするメジャー選手たちがいました。

 自分達の内部の選手が大勢、強い誇りを持って参加する大会を、メジャーもいつまでも見下げているわけには行かなくなったと思います。

※2017年第4回大会の時の記事

dot.asahi.com

 

※以下今大会の記事

thedigestweb.com

www.jsports.co.jp

www.tokyo-sports.co.jp

 

――今回のイタリア代表には国内トップリーグであるセリエA組があなたを含む4人しかいなかった。残りのロースター26人は全員がイタリア移民のルーツをもつメジャーや3Aの選手たち。国内のファンにはWBC代表のあり方を疑問視する向きもあったようですが、軋轢や不和はなかった?

「チームの団結は堅かったですよ。仮にイタリアで生まれ育った選手だけで代表チームを編成したとしても、上位国にはとても太刀打ちできない。それは国内組の方がよくわかっています。むしろ僕らセリエA組は、ニッキー・ロペス(ロイヤルズ)やデビッド(エンゼルス)とドミニク(ダイヤモンドバックス3A)のフレッチャー兄弟ら北米出身者たちのモチベーションの高さに驚かされた方です。彼らへの恨みとか妬みといったものは絶対にないですよ。ともに戦える有り難さでいっぱいでした。東京の準々決勝まで行けたのは彼らのおかげですよ」

(ナンバーウェブ記事より引用)

number.bunshun.jp

 

 

 日本の話に戻ると、こうしてメジャー選手の参加意思表明がしやすくなっていた所に持ってきて、ダルビッシュがバリバリに復活、大谷は能力全開モードになっていたという幸運も重なったわけです。2人とも、もし去年の成績が低調だったら、たとえ球団が止めなくても参加は微妙だったと思います。本人の体力や調整力を信頼してもらえる状態で、本人たちも自信を持てていたからこその参加だったはず。

 そして、彼らが参加可能になったことでたっちゃん(ヌートバー)の参加が決まったし、メジャー移籍が決まったばかりの吉田正尚も参加を認められる流れになったのだと思います。正尚もあちらでの練習の好調ぶりで本人も周囲も安心できたわけですが、この日本人メジャー選手参加の流れは本当にミラクルでした。

 メジャー組の参加は今回のJAPAN代表の成功の最大要因と言えるものです。これは、国内での細く長く続いた栗山体制構築の流れとともに、メジャーの風向きという周辺環境の変化によってもたらされたものと言えるでしょう。

 

まとめ

 

 以上がスタが考える、今回のJAPAN代表に成功をもたらした環境面での要因です。他にもたくさんな要素が絡むと思うのですが、国内の組織とアメリカの組織の環境要素が同時に整ったのが大きかったかなあと考えます。

 コロナで1大会飛んで、その間に色々な風潮が一気に変わったということもあるかもしれませんね。もしその1大会があったら、その前までの空気を引きずりますから、変化はもっと漸進的で緩やかだったかもしれません。

 間が開いて久しぶりの大会となったことで、何だかんだ言ってやっぱりフェスタ的なものは楽しいって気持ちが盛り上がりますし、どうせやるなら大々的にやりましょうよって話にもなりそうですもんね。

 色々ニュースなどを見てきたスタの妄想全開って感じですけど、何か皆さんが大会自体の構造について考えたりする参考になればと思います。

 WBC、これからも楽しめる大会になっていって欲しいですね(メジャーさんあまりガメつくならんといて😅)。