フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

なが〜く愛してきたパ・リーグをゆる〜く語るブログ、フィルパリです。

【現地観戦】ミラクルバスター目撃録。健気な小田ファンの逸話も聞けた最高の夜【CS final 第3戦】

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CSファイナルステージ、オリックスvsロッテの第3戦。京セラドーム観戦しました。
バッターボックスに近い、少し3塁寄りの上の方からグラウンドを見下ろす席です。

 

凄い試合見せてもらいました。
最後の、オリックス小田裕也のバスターが、ファーストの横を抜け、1塁線の、たぶんほんのボール1個分だけ内側に落ちて転々と転がっていく。白光のような軌跡が瞼に焼き付いています。

小田が打席に入ってからの1分足らず。
ファンが味わった気分のジェットコースターをどう表したら良いものか。

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無死1、2塁のチャンスを迎え、そのまま小田が打者になった時、もちろん現地のファンの雰囲気は「100%送りバントだろーなー」。
細工は安達の打席でやっちゃったし、走者が3塁に進んでさえくれれば、という場面。
何より、今年の小田は「失敗しない男」だもの。
ピンチランナーでの盗塁や走塁、守備固め。地味な仕事を全て完璧にやってのけた。
送りバントなんて朝飯前よ。

 

なんだけど、、、、、、。

 

なんだけど、この場面の送りバントはプレッシャー半端ないわー。
下手やらかしたらダブルプレーにもなりかねない。
いくらベテランでも緊張するよねえ。足震えるぐらい。
場内のオリックスファンは、小田の心臓の鼓動に寄り添うようにざわめきます。

 

ロッテ側の作戦確認で少し間が空き、再度かかった登場曲と共に小田が打席に立つと、正尚やラオウを迎えるのと同じくらいの拍手が湧き上がりました。
「きっついバントやけど、頑張ってやー!」
「お前なら絶対送れるで!頼むで!」

 

チャンスを喜ぶ拍手というより、ピンチで励ますような拍手。
この試合、ずっとオリックスファンのそういう拍手が暖かかったのです。
先発の山﨑颯が早々と降板してリリーフした富山がボール先行になった時、後押しの拍手に奮い立ったような投球で凌ぎました。全方向から巻き起こる、心を込めた拍手です。

 

案の定のバントの構えは、投手の益田が様子見外し。ふぅ〜っとなる場内。
そしていよいよ1球目が投じられます。
益田の手からボールが離れた瞬間、小田が斜めにしていたバットをスッと引く。

「えっ⁉︎、えっ⁉︎、なに???、」

ここからはもう、スローモーションです。
バントをさせるつもりだけど、少しでもやりにくくとインハイに投じられたボールが、すーっと小田の懐の方に飛び込んでいく。益田もいいコースに投げたのです。
少し体を引きながらバットを振る小田。

「わー⁉︎、振っちゃうの⁉︎、振るんだそれ。振っちゃったよ‼︎」

 

ただ振ったんじゃなかった。インハイを待ってのバッティング。
小田は思いっきり引っ張って叩きつけて、まずはファースト三木の横を抜く。

 

「うわわ!叩いたー!、小田っちすげー」

「、、、どう?どう?、、、わ!、ファースト抜けたぁ?」

 

ここまで3秒くらいですかね(笑)。あとはただただ祈るだけ。

 

「ああああ、ギリギリだあ〜、、、切れちゃうの? 切れないで、切れないで、、、」

「うわあぁ〜〜〜〜〜!!!! インやぁ〜〜!! 走れ、走れえーーー!!」

 

イケメンで名を馳せる小田ですけど、この打席、後ろ姿の漢前だったことと言ったら!
バントの構えの時はあくまでクール。
それがヒッティングに変わった瞬間、ストリートファイターみたいな気合いですよ。
力一杯叩きつけた背中が「いてまえ!おりゃぁ!」って殴り込みモードになってた。

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1年間、少し鬱屈した思いも抱えながら、地味な仕事をこなし続けてきた小田っち。
そんな彼が、こういう形で大詰め舞台のヒーローを掻っ攫う姿は、今年のオリックスを象徴するようでした。まさに「全員で勝つ」。

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並びがいない1人席で、息を飲んで観戦していたスタも、最後は思わず前後の席のオリファンの方達とグータッチ。
前列の方は小学校低学年くらいの坊やとご家族らしき男性。坊やめちゃいい笑顔。
そして後ろの席は、オリ選手たちに詳しい女性2人組。

 

小田っちが守備固めで出た時から、「小田ちゃん出た!」って喜んでいた彼女たち。
振り返ると「、、、小田ちゃん打ったよ、、、」とハンカチで目頭を押さえています。

 

「小田っち凄かったですね! 良かったですね〜。ファンなんですね」と尋ねたら、とっても素敵なエピソードを聞かせてくださったのです。

 

「実は、会社の同僚の女性がめちゃめちゃ小田ちゃんのファンで、、、」

「でも、彼女が見に行くと負けちゃってばかりで、、、」

「今日も観戦したかったんだけど、負けるといけないからって彼女我慢して、、、」

「代わりに応援してきてね、って託されて来たんです、今日」

「だから、小田ちゃん出た時<出たよ!>ってさっき連絡したんですけど、、、」

「最後にこんな打ってくれたから、もう、、、」

 

そっかあ。「自分が見にいくと負けちゃう」って、ファンあるあるだよねえ。
それ気のせい、って割り切れない。なんだか、自分が疫病神に思えてしまう。
わかるなあ、その切なさ。めちゃわかる。スタもかなり経験してる。

 

stadienne.xyz

 

好きな選手のためならほんのちょっとの縁起も担いで、自分は我慢。
目の前で見たい気持ちをぐっと堪えた小田ファンさん。
応援してねと託されて、涙溢れるまでしっかり応えた同僚さん。


パ・リーグCS史に刻まれるような熱い試合の名場面の後、健気で一途なファン気質(かたぎ)と優しい友情まで見せてもらった、奇跡の一夜。

 

3連勝の可能性を感じて、この日のチケ取った自分を褒めたい。京セラドーム前はもうクリスマス飾りだったけど、ひと足早いプレゼントをもらった気分になれたスタでした。


※追記:この日の小田についての素敵な記事ご紹介(11/17)

number.bunshun.jp

 

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