フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

なが〜く愛してきたパ・リーグをゆる〜く語るブログ、フィルパリです。

【観戦記】西武・山川ほたぴをめぐる優しくもタフな世界【20220619西武vsオリックス】

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ベルドでの西武vsオリックス3連戦の最終日。前日ノーノー試合を見ながら、こんな試合の翌日はいったいどういう雰囲気になるのだろう?と思ってチケを取りました。急に思い立っての観戦なのでもちろんぼっち。ひとり観戦の良さは、グラウンド上で起きることをじっくり観察できること。バーガー1個をさっさと平らげ(今井、プロデュースバーガー美味しかったから早よ戻っておいで)、飲み物は暑かったからコーヒーフロート(いや暑かった💦)。あとは頬杖をついてじーっとグラウンドを眺めるだけです。

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6月19日(日) 西武(與座海人)○:オリックス(山﨑福也)● 3:2

 

さて、選手たちの様子はどんなだろう?。今年早くも2度目のノーノーを喫した西武。なんとか勝ったものの課題の貧打はちっとも改善していないオリックス。どちらの野手もしんどいだろな。自分だったらと考えると冷や汗が出る。自分なら凹みっぱなしだよなー。眉間に皺寄せて泣きそうになって、寄ってくんなオーラ振りまいちゃうなー。顔に出さなくたって、ちょっとは重い空気が残っているのじゃないかなあ?。

 

でも実際のグラウンドにはそんな嫌な暗さはちっとも無かった。両チームの選手たちはいつものように動いて声も出て、変わらず今日に備えてました。ああこれがプロ野球だよね。1年の2/3を、ほぼ毎日毎日やらなきゃならない。ちょっとやそっとの喜怒哀楽でペースが左右されるようじゃ務まらない。酷い負け方をしようが凄い勝ち方をしようが、昨日は昨日、今日は今日。その切り替えがあるから、こちらも毎日励まされるんだね。

 

前2日間と雰囲気は何も変わらぬ試合前練習。みんな元気でいいね、と思いながら眺めていると、隅っこの方で両チーム選手の微笑ましい交流が始まりました。オリックスの選手がまだ残っている時間に、西武の山川がアップを始めた時のこと。山川はいつも、まだ相手チームの選手が残っている時間に真っ先に出てきます。長座して柔軟していた山川が、近くを通ったオリのキャッチャー伏見を呼び止めて、何やらお喋りし始めました。試合のことか挨拶か。テディ・ベアタイプのふたりの会話は微笑ましい。

するとそこに、オリの選手がまたひとり、横からヘッスラして割り込んできました。彼は滑り込みながら座っている山川の視線の下に飛び込むと、その後は身振り手振りを交えてずーっと談笑しています。細身で小柄、目立つ茶髪。遠目にでもすぐわかる泰ちゃん(山岡)です。Twitterにも様子を上げてくださってる方がいました。ありがたいです。

 



 

 

前々日の試合では、山川に手痛い特大ホームランを浴びて敗戦投手になっていた泰ちゃん。前日の試合前練習の時には珍しくちょっと表情も暗かったりしたけれど、このお喋りの時にはもう、明るくチャラく人たらし小僧ないつもの泰ちゃんでした。きっと、それまでは完璧に押さえていた山川に、今年初めて打たれたあのホームランについて、どうしてもお話したいことがあったのでしょう。真剣勝負をした同士だからこそ通じる会話を楽しむ様子が、遠目にも伝わって来ました。

そうこうする内に、今度はノシノシと歩いてきたオリのラオウ(杉本)が会話に参加。山川とラオウは同級生。去年ラオウが初めてオールスターに出た時に、色々アドバイスをもらっている仲。



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山川の方だって、昨年ホームラン王のラオウに対しては開幕前の抱負に名前を出したり、ちゃんと意識しています。そして、そのコメント通り、今年は圧倒的なバッティングを見せていところが素晴らしい。同級生とはいえ、やっぱり山川が兄貴分、ラオウが弟分というところかな。

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兄弟的な関係性は、キャリアだけでなく彼らのキャラの要素もありますね。大勢の選手を引き連れて自主トレをしたり、面倒見がよく長兄気質な山川。甘えん坊で、チームではいつもいじられ弟キャラ(公式動画で寅威に”5歳児”と呼ばれてた)なラオウ。そんな関係性が、この日は試合の中でも顔を出しました。

ラオウが肩口にデッドボールを受けてしまいます。でっかい声で「痛ぁ!」と叫び、顔をしかめながら1塁へ歩いたラオウが当たった場所を見せると、すっかりママの顔で「おお痛い痛い、よしよし」とばかりにさすってあげる山川。「ほたぴ」というかわいいニックネームの山川らしい癒し場面。でっかい図体のふたりのやりとりにお客さんも大喜びです。


実は前日も、ヒットが出なくて意表を突いたセーフティバントを成功させたラオウが、1塁塁上でいたずらっ子みたいにしてやったりの表情を見せ、山川もついニヤニヤしてしまうという光景がありました。まあこのバントヒットには味方の中嶋監督でさえ笑いを堪えきれなかったわけですが、それにしても山川を見るラオウの嬉しそうな顔といったらありません。山川の顔を見ると、どうしてもかまってちゃんになってしまうラオウなのです。交流戦ではまばらだったホームランが2試合連続で出たのも、山川の視線があればこそかもしれません。

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最近のプロ野球の、こういった相手チーム選手との交流に関しては批判的な意見も多い。スポーツには常にキリキリした雰囲気を求める人も多いですから、試合前や試合中のこの手のやりとりを見ると、なあなあだと憤慨されたりするのです。でもスタは逆の意見なんですよね。真剣勝負の中でのこの一瞬の切り替えと余裕にこそ、プロ魂を感じます。

去年の東京オリンピックで感動を呼んだ競技にスケートボードがあります。何が見る人を感動させたかと言えば、高度な技術もさることながら、選手たちがお互いをリスペクトして励まし合い、讃えあって交流しながら、最高の技を披露しようとしている姿でした。スタは、今のプロ野球はこういう、スポーツの新しい方向性、明るく伸びやかに高みを目指す姿に近づけているのだと感じます。

昔と違って今は球場に小さな子供たちもたくさん来ます。ずーっと息が詰まるような試合で、スタンドにもピリピリした空気が満ちているばかりでは彼らは持たない。張り詰める中の一瞬の笑顔があることでどれほど楽しみが増すことでしょう。そして、そういう時に選手同士のリスペクトや愉快な関係が見て取れれば、スポーツのライバルとは好敵手、好ましい相手なのだと自ずとわかっていくでしょう。

プロ野球選手のオープンで心温まるやりとりは、決してなあなあではありません。つい情が混じる、なんて疑う人もいるけれど、そんなことはほとんどない。勝負のかかった場面では、仲良しの選手だってボコボコです。例えばこの日仲良くしていた両チームの選手だって、試合でやられた時にはほんとに悔しさを噛み締めていた。ファンは敏感。その緊張感があればこそ、一瞬の心優しいやりとりに和み癒されるわけです。


さて、山岡、ラオウの他にも次々とオリ選手が詣でていた山川ですが、まるで縁起物の像のようでした。スタは、毎年通っている早稲田の穴八幡神社の境内に、撫でると福があるという布袋像を思い出しましたね。なんか、山川ってニコニコ優しそうだし、姿といい物腰といい、「福があるよ」オーラがまばゆいw。

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彼はいつも、ライバルチームの選手たちにも心を込めてアドバイスします。ラオウ然り、ソフトバンクのリチャード然り。今年も、日本ハム戦で新庄監督に頼まれて万波にアドバイスする姿がニュースになりましたが、頼まれた時だけではなく気にかけてあげたりする。ホームランを打てる選手が増えてほしいという度量の大きさ。今年は特に包容力が際立っています。太陽系の太陽って感じ。

 

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 いつもどこかの選手が寄ってくる優しいほたぴ。でもその優しさの裏に、君たちには負けないから、という岩のような自信がある。俺が越えられない壁だぜ、という傲慢なほどの自負がある。彼の優しい世界は、同時にプロのタフな世界だなあ、と感じたこの日のやりとりなのでした。