フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

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【投手大乱調】失敗受容力が高いオリックスそこを学びたい日本ハム【2023.4.25,26FvsB観戦記】

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 4月の25,26両日、エスコンフィールドで日本ハムvsオリックス戦を観戦しました。面白い試合でした。この2連戦とも両チーム投手が思わぬ乱調で予想と裏腹の展開。そういう状態に陥った投手の受容の方法が色々見られて興味深かったです。

 25日の両チームの先発はオリ伊藤大海、ハム宮城大弥。そこまで伊藤がちょっと不調で宮城は絶好調だったから、宮城に分がありそうではありました。でもまあ伊藤も悪いなりになんとかまとめるだろうから、そんなに点数が入るような予想ができる組み合わせじゃなかったのです。

 ところが、蓋を開けたら両先発が立ち上がりからグラグラでした。伊藤は先頭打者に四球を与えると初回から3失点。最近の不調を考えれば失点も驚かないけれど、3点はなかなか大きい。しかもストライクを取るのに四苦八苦で「こりゃ交代時期が難しいね……」と思わせます。しかし、なんとか2回3回と乗り切りました。

 一方宮城の初回は、こちらも走者を出したのですがひとまず抑えて無失点。立ち上がりに緊張しがちな投手なのでひと息つけたから落ち着くだろう、と思いきや、2回に大変なことになります。ボールが先行して1死から四球の走者を出し、迎えるのは伏見寅威。

 去年までオリにいた寅威と宮城は名コンビのバッテリーでした。寅威がハムに移籍して最初の対戦は宮城の完勝。いつも意識したコメントを出す宮城がことさら嬉しそうだったものです。そんな伏線があってからのこの打席。今度は先輩の意地で寅威がやり返し、見事にヒットを放ちました。そこから宮城は投球が一気に単調になり、連打を浴びて5失点。なんと、2回で降板となってしまったのです。

 この逆転で立ち直るかと思われた伊藤ですが、どうにもピリッとなりません。スタンドから見ていたら、逆転の時の喜び方もなんだか弾けてないし、その後マウンドに上がる足取りも重い。すっかり自分の調子に気持ちが巻き込まれて浮上できず、悶々としている感じが伝わってきます。そうこうする内に失点が重なり、5回には再逆転され、こちらも降板してしまいました。

 翌26日には、オリ先発の田嶋大樹と、ケガから復帰したばかりのハム中継ぎ堀瑞輝が乱れます。

 タジ(田嶋)は去年からちょっとハムが苦手だけど、今年は調子がいいので回避せずに当てたのでしょうか。でも始まってみるとどうしてもボール先行になり、ストライクを取りに行く球を打たれる繰り返し。前日の宮城も制球に苦しみましたが、やはり完全に初めての球場のマウンドの影響も大きかったかも。結局5回途中で降板です。

 肩を痛めてやっと復帰したみっくん(堀)は、前日の今期初登板では素晴らしい投球を見せました。この日は好投した先発スズケン(鈴木健矢)の後を受け、大量リードの中での登板。連投や強打クリンナップ対応などのテストもあったかもしれません。そこそこ投げられれば良かったのです。でも結果は、3者連続ホームラン被弾と散々なもので、涙の降板になりました。

 前日とは全く違う投球内容。スタは両日似たような位置から観戦したのですが、球の勢いがまるで別人なんですよね。このパフォーマンスの落差が、タイトな登板による疲労か、緊張やびびりによるメンタル面の問題か、そこはしっかり分析して切り替えないといけないなって感じでした。

 さて、これだけ思わぬ乱調に陥る投手が出ると、チームもあたふたしてしまいます。パニック的な空気が場内に満ちてきますから、それを払拭するのは容易ではない。尾を引かぬためには、みんなが上手に重い空気を変える振る舞いをしていく必要があります。

 そういう振る舞いの経験値の高さを感じさせたのがオリックスです。まずはベンチのチームメイトのフォローが見事。うつむいて降板してくる投手たちは、ひと息つく暇もなく、後を引き受けてくれた中継ぎ投手の応援をします。しかし、ふと気がつけば、隣には労わるチームメイトが寄り添ってくれているのです。

 宮城には捕手陣のフォローが入っていました。オリは経験値の高い捕手が何人もいます。今は若月健矢、頓宮裕真、そしてハムから今年移籍した石川亮。彼らは、まだ宮城の投球時からベンチで様子を心配しながら見つめていました。そして、降板して帰ってきた宮城の隣に陣取ると、ずっと彼と静かに話していました。

 タジにも最初は捕手が寄り添いました。この日は知り合って間もないいしりょ(石川)が話し相手だったようです。その後は仲間の投手たち、中継ぎ陣がタジと並んで仲間に声援を送ります。

 仲間にうまく行かない時があった時、その結果を受け容れ、当人のやり切れない気持ちも受け容れる。そうしてフツフツする不満を上手に発散させて、次にやり返せるよう気持ちを立て直させる。リーグ優勝した一昨年、日本一になった去年と、オリックスはそんな経験をたくさんして、全員がすっかり手だれになったのだと思います。

 こういう受容力は、もちろん失敗した本人にも必要です。まだ若い宮城は、寄り添ってくれる先輩に素直に頼る姿を見せていました。そうすることできっと、だんだん冷静になっていき、自分を許して前を向けるようになるのでしょう。そうしてきて、彼はあの若さで着々と実力を養ってきたのでしょう。

 タジは孤高タイプです。ベンチでも1人でいることが多い。でも、この日は寄り添ってくれるいしりょと話しながらきちんとガス抜きしていましたし、投手仲間と初登板した後輩曽谷を迎える時は、本当に力強いグータッチを差し出していました。

 彼もここ2年優勝争いをする中で、貴重な経験をしているのです。一番大きかったのが一昨年終盤のマリンでのロッテ戦、あのT-岡田の逆転3ランの時。先行を許しベンチで祈る思いで応援していたタジは、眩しい思いであのTさんのアーチを見ました。それから彼は、自分が失敗しても仲間を信じて声援することを続けています。

 オリの選手たちは、この2年で失敗から這い上がっての成功体験を積み上げてきました。そこから、失敗のいなし方、ネガティブな気持ちの薄め方、切り替え方を身に付けたのかなと感じます。

 対するハムの選手は、まだまだそういった成功体験が足りません。失敗をした時に切り替える方法を、もしかしたら美味しいものを食べるとかの生活の中でしかやったことがないかもしれない。だから涙が多いのかもしれないな、って感じたりします。

 どうにもこうにも酷いピッチングだった伊藤は、ベンチでひとりへたり込んで心を開けず、人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しちゃったし、仲間もかける言葉を見つけられずにいました。カタストロフ的3者連続弾を打たれたみっくんには、まだ経験の少ない若者たちはなかなか寄り添うことができませんでした。

 ハムに今年オリから移籍してきた捕手の寅威は、失敗受容の経験が豊富です。3者連続被弾のみっくんを受けていた彼は、勝利して試合終了するとすぐにみっくんに駆け寄っていたようですし、その後もフォローしたでしょう。寅威はきっと普段の時やベンチにいる時などは、そういう経験を少しずつ広めているだろうと思います。

 とはいえ、ひとりが頑張ってもなかなかチームのムードは変えられません。失敗を試合中に受容して切り替えることの大事さに気づき、実践していける選手がどんどん増えていくことが、ハムの成長に欠かせない要素。翌日切り替えることはできてる感じなのでね。試合中にどよんとさせない術を身につけてほしい。

 これからも、オリの失敗受容力の高さに感心しつつ、ハムがどう身につけていくかに注目したいと思ったスタであります。

 

 

 

 

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※喜ぶタジの姿が印象的

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