西武の栗山巧がとうとう2000本安打を達成しました。途中までしか試合を見られなかったスタは、大敗の中の最終打席という結果だけをまずは知り、あらま、交代して日を改めての挑戦の方が良かったんじゃないの?って、一瞬思ったものです。でも、動画でその場面を見たら、そうじゃなかったとわかりました。
敵地で、しかも相手は西武ファンが複雑な思いを抱く選手がたくさんいるチームで、試合は序盤から大差を付けられ、もう敗戦必至な状況の9回表1死無走者、という控え目過ぎる舞台。お祝いムードが微塵もない中で、普通の試合の普通の打席のようにバッターボックスに立つ栗山。ヒットが出た瞬間、ちょっと気が抜けたようになっていたグラウンドいっぱいに、祝福が、歓声と万歳と拍手と笑顔が溢れた瞬間は、雲が切れてお日様が顔を出した時のよう。
気分がハイになった西武は、追いつかぬまでも反撃に転じます。栗山アメノウズメの神(笑)。花束贈呈も、元チームメイトの後輩銀仁朗が露払いをし、固い絆の同期おかわり君(中村)が続いてなんのケレンみもなく、ナチュラルな喜びが滲み出ていて良かったですね。色々なものが浄化されて、晴ればれとした記録達成の瞬間でした。
思い返せば、ルックスも人柄も抜群で数字的実績も十分なのに、派手な舞台の常連選手ではなかった栗山。スーパーな外野手が常時顔を並べるパ・リーグでは、ベストナインも数回しか取れていない。オールスターゲームに至っては、選考までの前半戦に不調なことが多いせいもあるんですが、1回しか出場していない。その、プロ入り15年目にして初出場したオールスターゲームでホームランを放った時の、「オールスターが似合います」という実況で、ファンは涙したものです。まあ、その試合もMVPかという展開からパがありえないような逆転負けをして、敢闘賞で終わっちゃうのですけれど。
若い頃はそれなりに尖ったお洒落をすることもあったし、わりあい短気に乱闘ムードを醸し出したり、契約更改で不満を顔に出したり、感情の起伏を見せていたのですが、だんだん落ち着いて行きました。昨日の会見で、西武について「野球に集中できる」のを良いところとして述べていましたね。本当に余計なものはどんどん削ぎ落とし、野球ひと筋の選手になり、それとともに穏やかで落ち着いた風情が漂うようになりました。残り10本となってからは少しだけ停滞したものの、すぐ「1本1本」の言葉通りコツコツと、カウントダウンしていきました。
野球から気を逸せる余計なことはしない。リップサービスはしないけれど口に出すことはしっかり実践する。あの辛口の里崎が、西武のキャンプで真っ先に目についたのは栗山の練習に臨む姿勢、と動画で言っていましたね。どんな時でもただ黙々と練習を積み重ね、打席を積み重ねた結果の2000本安打。
栗山の後ろ姿をずっと見てきた選手たちが集うだけの試合という舞台は、彼の本当の価値を知っている野球の神様からのプレゼントだったかもしれない。そう思うと、飾り気のない舞台で達成された偉業が、なおさら尊く感じられるのです。そして、栗山に憧れるロッテのトシ君が、生目撃を直前で逃し、ひっそりと画面越しに偉業を見届けたのであろうことにも小さな奇跡を感じます。トシ君きっと、しみじみと栗山の為してきた歴史の重みを胸に刻んだことでしょう。
パテレのまとめ動画(サムネが背中なのがいい)と、子供の頃から利発だったことがわかる良記事を貼っておきます。クリ、2000本安打達成、本当におめでとう!