フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

なが〜く愛してきたパ・リーグをゆる〜く語るブログ、フィルパリです。

【引退と】肩の荷を下ろしたユウちゃん、今もずしりのマー君【敗戦と】

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今日、日本ハム・ユウちゃん(斎藤佑樹)の最後の本拠地登板が終わりました。その少し前の時間、高校時代にユウちゃんと甲子園決勝戦で投げ合い、彼と対照的なキャラで常に対比されてきた楽天・マー君(田中将大)が、順位争いの大事な試合に打ち込まれ、過去最短での途中降板をしていました。

 

ユウちゃんは打者1人との対戦だけで交代すると、ベンチに戻って思わず落涙。しばらくして笑顔に戻ると、最後の一軍グラウンドの空気を心の底から味わっていました。本当に、すっかり肩の荷を下ろした人の表情でした。

 

一方のマー君は、寒さもあったのかもしれませんが、持ち前の粘りが発揮できません。連打の後、おかわり君(中村剛也)に止めの2ランを浴びて交代。マウンドを降りる時は淡々とした表情でしたが、ベンチに腰掛ける瞬間に気持ちが爆発したのか、グラブを地面に叩きつけました。こんな激情を見せる彼も本当に珍しい。彼の肩にはまだ、ずしりとチームの運命がかかっています。

 

退くことを決めて穏やかになった表情と、今まさに戦いの渦中にいる憤怒の表情。同じ日に見せた2人の顔つきの違いに、「この2人は最後の最後まで対照的になる運命なんだなあ」と感じました。

 

ユウちゃんは、高校野球で一大フィーバー(死語)を巻き起こし、大学進学やプロ入団後も変わらぬ人気者でした。北海道移転後、集客に苦労した日本ハムにとって、それまでに得られなかったファン層を開拓してくれた功績は、外部の人にはわからぬほど大きいものだったと思います。

 

プロ生活のほとんどはケガもあって成績を残せず、一時は高校時代の清々しい様子とは裏腹な言動も見せたりして、周りが過剰に期待したスター像にはなれなかった。けれども、本来、落伍する選手の方が多いプロ野球。思うように行かなければ、荒んでしまったり、完全に自信を喪失した姿になってしまう選手も大勢います。ユウちゃんだって、そうなってもおかしくないくらい、しんどかったに違いない。

 

でも、彼はセルフイメージをぶち壊しにするようなやけっぱちな振る舞いや愚行はせず、なんとか自分の軸を野球に置き続けたのです。これは、すごい頑張りだと思う。かつての無表情(目が笑わない)や、時々出る乾いた言葉(追っかけファンだった知人は、思わぬきつい言葉を投げかけられたことがあると言っていた)は、切れそうになる気持ちを保つための、無意識の自己防衛だったのだろうと感じます。あれだけ周囲から注目(ネガティブな意味も込めて)され続けたら、それも仕方のないことだとも。

 

プロに入ってからは、技術の向上も、活躍度も、成績も、記録も、収入も何もかも、自分や周囲が期待したほどには得られなかった。でも、軸を野球に起き続けたことで、平凡な生活では簡単に得られぬようなユニークな人々との深い絆が残っていた。最近の彼の笑顔やコメントがとてもナチュラルになっていたのは、それに気づけたからかもしれない。「持っているのは最高の仲間」というスピーチは、心の底から出た言葉に聞こえました。

 

マー君の方はと言えば、プロで何もかも得てきたような類稀な選手です。もちろん運も強烈に強い。けれど、マー君の場合は、運を意志で呼び込んでいる感がある。悪戯っぽい笑顔や愛嬌のある態度で柔らかに見えるけれど、やると決めたことは必ずやり通す剛の人。やると決めてできずに終わったことは、多分これまでほとんど無かったと思う。

 

それが今年、やろうとしていることがずーっと上手く行かずに苦しんでいます。一大決心をして日本に帰り、ひとつの目標だったオリンピックの金こそ手にできたけれど、最大目標だった楽天への貢献が、どうしても上手く行かない。それでもなんとかかんとか、最低限の働きをして踏みとどまってきたのに、最後の最後で一番悪い状態になってしまった。グラブを叩きつけた姿や充血した目に、抑えに抑えてきた悔しさが溢れ出していました。周囲が近寄り難い姿には、少しの孤独も感じられました。

 

でも、いつかマー君にも、あの悔しさに満ちた瞬間さえ良い思い出だったと、熱い戦いの中心にいられた自分を懐かしむ瞬間が来るでしょう。その時は彼も、ユウちゃんのような涙や穏やかさを見せるでしょう。仲間への思いをしみじみ話す時が来るでしょう。

 

もうしばらくはプロ野球という修羅場で過ごすマー君と、ひと足早く離れることになったユウちゃん。彼らの運命がまた巡り巡って交わることになるとしたら、今度はどういう形になるのかなあ、と、今日の2人の表情を見て、思いを馳せたスタでした。