ロッテのエチェバリアの生い立ちに関する記事がありました。来日してレギュラー固定に時間はかかったけれど、シャープなルックスと華やかで並外れた動きで、たちまちファンを魅了したパンテーラ・エチさん。キューバの選手を見るのは本当に楽しい。でも、国家体制に影響される彼らの背景を思うと、いつも少し複雑な思いになります。
メジャーで活躍し、イチローと同僚だったこともあるエチェバリアですが、米国への亡命は本当に大変だったことでしょう。上の記事の中ではさらりと書かれていますが、その苦労について別に記事もありました。
(DAZNニュース内で記事検索できずヤフーリンク。リンク元が消えるので別途部分引用を出しておきます)
エチェバリアは09年に11人の仲間と亡命を敢行。本人が「覆面捜査官がうようよいて、バレたら即逮捕。だから色々と質問して誰が信用できるか見極めるのが重要」と語るように、亡命はとにかく命がけだ。エチェバリアはなんとかメキシコにたどり着き、その後ドミニカ共和国に渡ってトレーニングに励んでいるところをトロント・ブルージェイズの目に止まり、4年1000万ドルの契約にサインした。
※引用:DAZN News 2021.3.26「【最強は誰だ?】アデイニー・エチェバリア|千葉ロッテマリーンズ|新助っ人外国人選手名鑑|プロ野球」より
亡命については、同じロッテのマーティンも、二度と同じ経験をしたくないほどの命の危険を感じたそうです。そんな思いまでしてメジャーにたどり着いた選手達が、わざわざ遠い日本に来てくれるのは、すごいこと。お金だけの問題ではなく、そこには、亡命しても故国への思いが強い彼らの特別な志もあるのかもしれない。
キューバ選手間の連帯感やキューバ代表への熱い思いを語るマーティンのインタビューもあります。日本のチームに所属して「自分たちはフリーエージェントでどこのチームにも借りはない」という言葉を読むと、彼らの移籍の覚悟の強さ、日本チーム入団が腰掛け気分でないことが伝わってきます。
五輪期間中の一時帰国からの再来日が少し遅くなってファンをやきもきさせたけれど、もうすぐ帰ってくるマーティン。また素晴らしい打撃や守備で魅せてくれることでしょう。エチェバリアとのベンチでのわちゃわちゃ復活も楽しみです。
一方、ソフトバンクのキューバ勢は様子に異変があります。5月に手の指を骨折したグラシアルは回復が遅れていて、中々目処が立ったというニュースが出ません。また、オリンピック予選出場組も、戻ってから元気が無い。デスパイネは負傷した上、里心がついて引退を仄かしたというし、モイネロも手首の違和感を訴えて離脱中。
予選でのキューバチームは、有望株が次々亡命した挙げ句に敗退しています。何があったか詳細は伝わりませんが、心身ともに本当に疲弊することがあったのでしょう。また、アメリカによる制裁で経済的に窮しているキューバですから、国内の状態の問題も何か影響することもあったかもしれません。なんだか、来季の動向にも影響が出そうな気配が見えます。
いずれにせよ、キューバ選手達が経験してきた人生の問題は、日本人がひと口で言えぬほど深いもので、その悩みや心情は、同じキューバの人以外にはけして理解できないことなのだろうと思います。それでも、いつも陽気で人懐こくて、ふざけるのも大好きで。そのくせ根は真面目で実のところハートは鋼。そんなチャーミングなキューバの選手達は、日本のプロ野球にもはや欠かせぬ存在です。彼らが政治や体制に翻弄されず、縦横無尽に活躍できる日が、早く来るといいのにな。そう願ってやみません。