2021年のパ・リーグ振返り、後半は下位の3チームについてです。
視点の中心は、コロナ禍の影響で急激に各球団がチーム構成を変えてきたこと、そのために若手選手や新興選手の活躍度の差がチームの成績を左右したこと、です。
導入部の総評や上位チームの振返りは、前半記事からお読みください。
下位チームの共通点
今回下位になった3チームはどこも、去年までは「育成上手」と言われていました。
自チーム内で鍛えて、1軍の試合で出る時にはもう実力十分な選手たちを次々育て上げてくる。
その手腕に定評があり優勝もしている3チームだったのに、今年は失敗でしたねえ。
若手・新興選手も起用したのですが、かつての上位時のようには機能しなかった。
今までの経験による運営方法が通用しなかったのが今年でした。
たぶんこの3チームは、育成の方針やシステムが確立されすぎていて、コロナ禍大変動に対応したら、歯車が全部噛み合わなくなったのじゃないか。
強い弱い以前に、何もかも上手く回ってない。
そういう状態で終わってしまった感じです。
4位 ソフトバンク
今年のパ・リーグの番狂わせ筆頭が、ソフトバンクのBクラス落ち。
前半戦から主力選手が次々にケガなどで離脱する不運もありました。
キューバ組が五輪出場で燃え尽き症候群みたいになったりもしました。
しかし今までなら、最後にはメンバーが揃って猛烈な追い込みにかかる、というのがお決まりだったはず。
主力が離脱しても、「代わりに出てくるのがこのレベルって勘弁してください、、、」と、他チームが音を上げたくなるような若手・新興選手が働く。
それがソフトバンクの強さでした。
ところが今年は、主力組、若手・新興組ともに迫力がイマイチ。
まずは主力組の方に、いつものような支え切る力が無かった。
例年なら、離脱者が出た後もチームが崩れきらぬよう、残った主力組がここ一番のしぶとさを見せるのに、今年は意外に脆く、段々他チームにもそれがバレてくる。
離脱者も、いつもなら戻った時にはバリバリになっているのに、今年はそうでもない。
そうなってくると、若手・新興組にも影響が出ます。
特にメンタルの面が去年までと全く違っていたように見えました。
これまでは、主力組が頼もしいから、若手・新興組も自分のことだけ必死にやれば良かったのです。
1軍やレギュラーに入り込むのさえ大変だったソフトバンク。
若手・新興組は、チームの中での自分の役割に目を向けて、それを果たせば御の字。
ところが、主力組にかつての強固さがないということが見えてくると、若手・新興組には自分が本当にチームを支えないとダメだってプレッシャーがかかってきます。
「強い強いソフトバンク」「最後は無双のソフトバンク」らしい選手でなきゃいかん、と思いながらプレーするから、どんどんぎごちなくなってしまう。
特殊スケジュールの去年を、優勝チームとして駆け抜けたのが影響したと思います。
終盤から急激に追い上げて、という形でした。
主力組は、去年は色々なことが手探りで気を遣い、しかもシリーズが終わるのが遅かったから、やっぱり調整が難しかったのだと思います。
そして、去年の短いシーズンの中で優勝を狙うとなると、若手・新興組に与える機会も少なくなって、実力底上げがひっそりと不足していたのではないでしょうか。
おそらくは、コロナが無くてもそろそろ若手への切り替えに入る時期。
去年特殊な年だと割り切って、切り替えに入っていたら、今年こんなに苦戦しなかったのかな。
どんな時でも強くあれ、という「常勝軍団」ゆえの今年の転落かもしれませんね。
5位 日本ハム
日本ハムは、若手・新興組を起用したし、終盤はある程度うまく行ったかに見えます。
でも、それは中田事件発生の副産物です。
本当ならもっと前から、今期出てきた選手たちに経験を積ませられたはず。
そして、去年からしっかり起用できていれば、もしかしたら今年は、オリックスに近いような形で、ある程度は勝てるチームになっていたかもしれない。
今年の5位は、前半かなり離して上にいた西武が転落しての順位。
ほとんど最下位と言って良いぐらいの、運よく上がれた5位です。
去年、コロナでの異例措置の連続で自分を律しきれずにいた中堅主力組をしっかりコントロールし、若手・新興選手にもっと経験を積ませていたら随分違ったはず。
中田事件があって慌てて若手・新興選手を使い始めましたが、やはりこの順位は、元を正せば彼らの起用法に失敗した結果と言いたい。
もっと遡れば、ショートスターターなどでグダグダした頃にも、奇策に走る前に若手・新興選手をしっかり鍛えて実践経験を積ませておけば、こんな凋落は無かったかも。
毎年沖縄キャンプを国頭含めて見にいく知人が言ってたことがあります。
大谷の2年目か3年目、彼が足の不調で練習中断したら、監督・コーチが全員そちらを見に行ってしまい、グラウンド上に他の選手しか残っていない時があったと。
スタも他の記事で書いていたと思いますが、鎌ヶ谷の臨時練習見に行った時に、近藤・杉谷・清宮の外野守備練習のダラダラぶりに失望したことがあります。
観客なんかには見えないところで、きちんとやっていたのかもしれません。
しかし、若手・新興選手をとことん鍛えて、書類の計画図ではなく、実戦上のタイミングですかさず切り替えを行なえる体制ではなかったとしか思えない。
新庄ビッグ・ボスは、今のところは意外に古めかしいというか、型にはまった選手像を口にするけれど、そのぐらいから始めないといけないレベルなのでしょう。
若手・新興選手たちのやっている野球が幼い。
来年は、もう一度、一から組み立て直すことになるでしょう。
その時起用する選手が、もっと自立した野球をする選手になっているよう期待します。
6位 西武
西武凋落の要因は、ソフトバンクとほとんど同じだと思います。
・去年、CS争いで後半消耗し、その影響も長引いて今年も不調な主力組がいた。
・大ケガ離脱者もいて、若手・新興組を多数、長く起用することになった。
・最初は元気だった若手・新興組だが、チームを通年引っ張る力は無かった。
優勝した2年間はレギュラーガチガチ固定だった西武。
そこに加えて短いシーズンの去年なので、3年くらい若手・新興選手がレギュラー同等の経験を積むチャンスが来なかった感じです。
なので、今年起用された若手・新興選手も実力や経験が不足していて、活躍が長続きしませんでした。
西武の若手・新興の選手は、守備や打撃の基本は鍛えられてるなあ、という感じ。
ただ、すごく真っ正直過ぎて、得体の知れない嫌らしさみたいなものは少ない。
楽天の9月からの山﨑みたいな得体の知れなさです。
源田や外崎が曲者過ぎるので、なおさら差の開きが大きく感じられる。
最終盤は、もう、若手・新興組に経験を積ませることに割り切ってました。
日本ハムとの最下位争いも、勝利最優先という選手起用ではなかったですね。
今年貴重な経験をした若手・新興組のうち、誰が試合巧者な曲者になっていくか。
そこいら辺が再浮上のカギのような気がします。
あと、やっぱり若林がどのぐらい復活するか。
それでチーム編成がものすごく変わってくるようにも思えますね。
助っ人選手も全員退団で、ここも次は全て新興選手。
来年は否が応でも、若手・新興組に通年チームに活気を与える選手が出てきてくれないとキツい。
今年は割り切れた辻監督が、また固定メンバーに戻したくなるのか、若手・新興組起用を継続するのか。
今のところ、一番来年の姿が読めないチームかな、と思っています。