フィールド オブ パリーグ           -パ主義野球ブログ-

なが〜く愛してきたパ・リーグとファイターズをゆる〜く語るブログ、フィルパリです。

【ブルペン】投手は見られて強くなる?【キャンプの華】

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 プロ野球キャンプの楽しみは、試合ではわからない、選手たちの地道な練習姿が間近で見られること。複数の練習施設が広い敷地に点在するキャンプは、野球ファンにとってはアミューズメントパークです。

 中でもブルペンの「いいもの見られた!」感はすごい。昨年あたりのキャンプはコロナでブルペンが見学禁止になっていたけれど、今年は日本ハム、オリックス、ソフトバンクの3ヶ所ともに、ブルペンでの様々な投球練習の姿を見ることができました。その様子をご紹介。

 

 

 

キャンプのブルペン見学の魅力

 

 キャンプでの練習施設は色々あるけれど、ブルペン見学は特におトク感が高まります。投手たちが試合でのアップ時以上に、自分と向き合って練習に専念する様子が見られるのです。その姿に遭遇できると、こちらもぐいぐい引き込まれちゃう。 

 入口や窓から差し込む陽光に浮かぶ投手のシルエット。バシン!、バシン!、とこだまする捕球音。キャッチャーの「ナイスボール!」という声や、時々聞こえる選手の唸り声。その緊迫感が空気を震わせて伝わってくる。

 思わず息を詰めて見守ってしまいます。見終わって再び広い場所に出ると、ほおっと深呼吸し、ああ至福の時間を過ごしたなって満足する。そんな後に感じます。

「やっぱり、ブルペンはキャンプの華だな」

 まだ諸事情で見学不可な所もあるけれど、今は多くのキャンプ地でブルペン開放を見せどころとし、観客席が雛壇のように用意されている所もあったりします。

 試合のマウンドよりお客さんが近くて視線が集中するブルペンでの投球は、選手もすごく緊張すると思う。神経質なら気が散るし、目立ちたがりなら舞い上がっちゃう。

 注視されている中で自分を見失わず、目的通りに練習を遂行していくことは鍛錬ですよね。ブルペンは、練習場でありながらステージにもなる場所です。

 

名護ブルペンウォッチでおじゃま者になる

 

2023名護ブルペンと観客位置

 日本ハムの名護キャンプはまだコロナ防止の隔離政策が厳格で、ブルペンには近づけません。投手を見るためには、離れた場所から斜めになったり首を伸ばしたりして、あるいはカメラの望遠レンズの力を借りて、なんとかかんとか覗き込みます。

 コロナ対策があるにしても、投手をファンに見せようという演出を、元々あまり考えてない感じが漂います。どうなのかな。位置的には一番開放的な場所なんだし、もっと投手をファンの目に晒していいんじゃないかな。

 後で述べるオリックスやソフトバンクのブルペンはすごく "投手陣を見せる" ことへの意識が高く、投手たち自身の見られることへの心意気も感じ、それもレベルアップにつながってるのだろうな、という印象があります。

 日本ハムもブルペンの前にファンを集めて、投手の自意識をくすぐっていった方がいいんじゃないかな。新球場のエスコンは、ブルペンがベルドと同じにファンの目の前。キャンプでも、来年からはファンの視線で投手陣を鍛えてもらいませんか?。

 

隙間ウォッチでおじゃま者になる

 さて、かくして今年の名護でのブルペンピッチ見学を半分諦めていたスタ。それでもちゃんと、印象的なシーンは訪れました。

 誰か1人投げているけど、どこに立ってもその投手の姿が見えず帰ろうと思った矢先。空いていた通用口から投げている投手が見えたのです。逆光で黒いシルエットは左投げ。目を凝らしたら、今年期待の根本悠楓(はるか)でした。いい場面だな、と思ってスマホで撮影。


 印象に残ったのはこの直後。根本の球を受けているのとは別の捕手が、通用口のところにさりげなく立ったのです。

 「あー、気になっちゃったんだろなー😅」

 スタがスマホを構えたのは、遠いとはいえ、左投げの根本とは向かい合わせになる位置です。きっとおじゃまファンの姿が目に入って、捕手の人に立ってもらったに違いない。

 「ごめんね」と心の中で謝るスタの頭には、15年前の名護キャンプの光景が走馬灯のように甦りました。

 当時、投手陣での注目の的はまだ若かりしダルビッシュ。ツンツンにとんがっていたエースは人の視線が大嫌い。「見てんじゃねーよ」というオーラを身にまとってました。ブルペンは見学禁止だし、控え場所のプレハブ建物に入って行っても、シャーっとカーテンを閉じちゃったり😅。


この写真は別のラン練習の時 

 

 当時はSNSの写真も盛んではなく、選手も一般人のカメラの視線には今よりずっとナーバスでした。その後急速に、一挙手一投足を一般人に撮影されてSNSに公開されるのが当たり前の時代が来て、選手の方もすっかり慣れて、良い方に共生するようになりましたね。今年のWBCで帰国したダルビッシュも、完全に時代に順応していました。

 あんなに視線嫌いだった彼が、久々の帰国で押し寄せたファンの前にどんどん姿を見せている。むしろ、「さあ、どうぞ!僕はここにいますよ、見てください」とファンに向かって手を広げている感じ。初日の練習後にファンの写真を確認したりする様子に、彼の経験してきたものの深さを感じて、スタはなんだかじ〜んと来ました。

full-count.jp

 

 そして、彼はファンの視線についてこんなことを言っています。

―ファンに囲まれてキャッチボール。特に気にせずか

 「以前であれば自分結構神経質だったので気になったかもしれないですけど、今はほんとに全く気にならないので自分のメカニックスであったりとか自分のやらなきゃいけないことに集中してきょうはできたと思います」(2/17中日スポーツ記事より)

www.chunichi.co.jp

 

 様々な障壁を乗り越えて実績を積み上げ、いい意味で図太くなって余計なものに気を散らされることがなくなったダル。メンタルのトレーニングやプラクティスも完全に確立しています。

 ハムの根本に話を戻すと、彼は昨日のオープン戦でも打ち込まれたり、このキャンプは模索してちょっと迷いが出ている感じ。高卒3年目。やっと二十歳を迎えるところ。素晴らしい才能の持ち主も、まだまだ苦労をして当たり前の若者です。

 これからどんどん経験を積み重ね、ダルのように確固としたスキルをものにして行ってね、と願いました。そして、本人が目標とする同じ左腕の宮城のように、チームを支える投手になってほしいと思います。

 大事なフォームチェックをしていたに違いない、根本のブルペン投球。目に入る位置に立ち、気を散らせてごめんね、と心の中で謝りながら、偉大な先輩のようにたくましく育つであろう若者投手の未来に想いを馳せた、ブルペンの隙間ウォッチでした。

 

清武ブルペンウォッチで投手の静かな闘志に震える

 

2023清武ブルペンと観客位置

 

 オリックスの清武キャンプもコロナ対策の隔離はありますが、今年はブルペン見学が開放されました。ブルペンの片側の扉は全開となり、その前にはファンがなるべくたくさん見られるようにと、テントでひな壇式の座席スタンドが設けられています。反対側の扉も少し開いて光が差し、逆光の中の投手たちのシルエットがドラマチック。

 今のオリックスの花形はなんと言っても投手陣。先発組も中継ぎ組も、イケメン揃いで強い球を投げ、キャラも立っている選手がずらり。集客に苦心を重ねた敏腕広報たちは彼らをぐいぐいファンの前に押し出します。

 選手たちもそれを決して嫌がりません。むしろファンの視線に晒されることを意気に感じて力に変えているみたい。フォーム修正などの、いわばカッコよくない練習でさえファンの目前で行ってしまう。オリの投手力は、見られて強くなる意識と並行して高まって行ったように思います。

 そんなオリのブルペンウォッチが楽しくないわけがない。人気投手が投げる時のひな壇席は争奪戦です。前の方でも柱が目前で全く投手が見えない場所もあるし、席取りキープ問題もちょっとありました。でもまあオリファンは比較的穏やかでマナーも良いので、そこそこ譲り合って余裕の心で臨めば、いいシーンが見られるかと思います。

 

開幕投手を狙う静かな闘志

 

 タジ(田嶋大樹)の仕上がりが凄い。キャンプに行く前から、SNSのカメラ女子さんのそんな呟きを目にしていたのです。見たいなあと思っていたら、ブルペンの前に座れ、最初に彼が登場してくれました。

 先発陣が一斉に並んでの投球です。みんなバンバン投げ込みます。その中で、ウワサのタジは、ウワサ通りの仕上がりぶりを見せてくれました。体もひと回り熱くなった感じがする。胸の張りも腕の振りも、キャンプ序盤のそれではない。1球ごとに集中している。何より目つきが燃えてて鋭いのです。

 「いやー、狙ってるね、タジ」

 一緒に行ったオリ姫女子さんと思わず囁き合いました。オリックスの開幕投手、WBC出場の山本由伸は回避で、他の誰かになると見られています。去年の後半8勝負け無しでチームの優勝に貢献したタジは、十分狙っていい投手。それを自覚しての早い仕上げに違いありません。

 

 

 大勢の中で投げたことにも深い思惑がありそうです。タジはきっと、周りで何人も投げて、観客も最初からたくさん集まっている中で投げることで、集中力を鍛えていたのかなと思います。

 彼はとても繊細で、人の視線が苦手なタイプ。左腕ですから、構えた時にずらりと並ぶひな壇席のファンと目が合う清武のブルペンはかなりしんどいはず。でも、そう言う中で、視線を弾き返すほどの気迫で投げ込んむ姿は、開幕投手への思いの強さの表れ。

 開幕に対戦する西武を苦手とされているので、そこも弾き返したいのでしょうね。とにかく、日頃はおとなしくて淡白な雰囲気のタジが、こんなにも意欲を発散させている。その迫力は、感動的なほどでした。

※この田嶋の記事を読むと日ハム根本の気持ちもわかる。

 

 その後昼どきとなって選手も姿を消し、我々も休憩に出ます。食事をしながら、同行のオリ姫女子さんが「泰ちゃん(山岡泰輔)が行方不明なんですよね〜」とぽつり。朝イチのキャッチボールのあと、見かけたという情報が無いらしい。ところが……。

 がらんとしたブルペンをもう一度覗きかけると、いつの間にか来た1人の選手の姿が見える。ユニではないトレーニングウェア姿。でも、足を上げたフォームを見た瞬間に誰かわかりました。

 「た、た、泰ちゃんやん!!」

 慌ててオリ姫女子さんを呼び戻します。まだ気づいた人は少なくて、ひな壇の特等席をゲットでき、オリのアイドル投手のピッチングを注視。トレーニングウェアだし、軽い投球練習なんだろうなあ、と思っていたらとんでもなかった。

 仕上がっているのです、泰ちゃんも。誰より細いけれど誰より強靭なバネ。猫のようなしなやかさ。投げ込む球の勢いも、もうシーズの絶好調時に近いレベル。高めの速球の確認をしているのが明らかでした。

 「狙ってるんだ、泰ちゃんも……」

 

 タジと違い、こちらはブルペンにただひとり。鋭い捕球音がひっそりした空間を間合いを置いて切り裂くようです。誰もいない時間に来て、ぐいぐいと観客の視線を引き付け独り占めする泰ちゃんのプライドと主役気質。痺れますよー、ほんとに。

 後日の練習でインタビューが出たけど、この日も全く同じ気持ちで投げていたのだと思います。由伸の前の開幕投手ですから、絶対再び投げたいに違いないのです。彼の(笑い)は不敵です。

hochi.news

 

 その後も彼らの好調ぶりは続き、まだオリの開幕投手の発表はありません。そんな相譲らぬタジと泰ちゃんのブルペン投球での闘志には震えました。いいものを見せてもらえて幸せなブルペンウォッチでした。

 

 

生目の杜ブルペンで   "競演" を堪能する

 

生目の杜ブルペンと観客位置

 

 ソフトバンクの生目の杜(いきめのもり)キャンプのブルペンは、清武と同様、ひな壇観客席が設けられています。観客数が非常に多いキャンプなだけあり、ブルペンにもしっかり場内係の方がいて、観客の出入りを捌いてくれます。

 一番前の席が空いていたのでそそくさと座ったら、前に置かれたでっかいモニターやそのケーブルが邪魔で手前の投手はほぼ見えない💦。あのモニターはなんとかならんのかな?。ブルペン前のひな壇席って、一番前などは人通りがあったり障害物があったりで、あまり見やすくはないですね。上方の方が良さげです。まあ、贅沢な悩みですが。

 あと、ブルペンがメイン球場の目の前。野手と投手で練習場が離れると、どちらを見ようか迷うので、この近さは助かります。選手たちもひょいひょい行ったり来たりしてました。その様子が見られるのは楽しいですね。

  

 

 

強力中継ぎ陣の競演を堪能

 

 オリックスと同様、投手たちを見せる、という意識の高さを感じるソフトバンクのキャンプのブルペン。まあ、ソフトバンクは個々の選手を押し出すというより、練習の様子を披露するという意識が高いように思います。試合前のシートノックの盛り上げぶりも同じ意識。

 ソフトバンクのブルペンでは、そういう練習披露精神は、しばしば  "競演” という形で表れる感じ。例えばキャンプ初日です。総勢18人がブルペン入り。こうやって、競演要素が入ってくると、メンバーが誰とか二の次で、練習それ自体が目玉商品になりますよね。

 見学に行った日は、ブルペンで、又吉、甲斐野、嘉弥真が並んで投げていました。この、並んで、というのが味噌ですね。見た瞬間に「おっ!、中継ぎトリオ!」ってなりますもの。そうして、3人が代わるがわるで投げて行く。  


 

 どうしたって、セットアップやワンポイントのリリーフ場面が目に浮かびます。本人たちも絶対意識してる。自分だけが調整遅れ、みたいな雰囲気は絶対出さないぞ。クールでいようとする中継ぎ投手のプライドがひしひしと伝わってくる感じ。 

 競演って、やっぱり実力がある選手たち同士でないと、そういう雰囲気になりませんよね。力があるもの同士が高い技術を張り合っていてこそ競演です。ブルペンで、競演の雰囲気が度々生まれるということが、ソフトバンクの投手陣の層の厚さを物語っているような気がします。

 ちなみにこの時は、一番手前の、陰になるところで大ベテランの和田が投げていました。壁と大モニターが邪魔で姿がほとんど見えないんですよ。たぶんほんの一部の人しか完全に見えてた人いないと思う。なのに、めちゃめちゃ存在感ありましたね。

 中継ぎトリオに目が行くと、その合い間にズバーン!と捕球音を響かせる。音を聞いただけでファンが「すご〜い」ってざわつく。なんだか、若手競演の舞台にちょっと出て場をさらっていく大御所スターっぽかったです。
 

 

キャンプならではの選手のお悩み姿

 

 キャンプのブルペン、選手たちがガンガン投げ込む姿を見られると、ほんとに気持ちが上がります。でも、それとは別の、キャンプならではのシーンがあります。それが選手のお悩み姿。

 フォーム矯正中とはっきりわかる練習は、野手の打撃なら試合前でも時々見かけますが、投手の方ではまず見られません。今回のキャンプでは、そんな貴重なブルペンでのお悩み練習姿も見ることができました。

 名護では、紅白試合で調子が悪く2軍に行く直前の齋藤綱記の投げ込みを。試合での修正点は自覚して、2軍の練習で少しずつ良くなっていることがキャンプ終了間際の中継で伝えられました。

 

 

 清武では、去年不調で登板最少だった山田修義のタオルを使ったシャドウピッチングを。自主トレでもきっとフォームの見直しをずっとやっていたのでしょう。この日はトレーニングウェアでシャドウ。キャンプ終盤にはユニフォームを着てシャドウ。そのぐらい根気のいる作業をしています。試合では誰の目にも触れない陰の努力です。

 

 

 そして、同じ清武で、代表に呼ばれても調子が上がらず、悩みに悩んでいた宇田川の姿。ピッチングでさえありません。子供の遊びのような壁投げです。感覚を取り戻すためにコツコツと延々と繰り返していました。その成果があっての、先日の強化試合での好投です。

 

 

 

 そして、生目の杜で見たのはケガから復活するふたりの投手の姿。彼らはもう一番悩んだところは通り過ぎ、全盛期を取り戻そうとする段階です。

 又吉は足の骨折からの復活。バランスももう大丈夫な感じ。

 

 甲斐野は肘を傷めて手術もし、ずいぶん長い間思うように投げられなかった。回復時の肘を庇ったフォームは投げにくそうで、本人はさぞ歯痒かったと思います。それがこのキャンプでの投球は去年までの縮こまったところがない。だいぶ新人の頃に戻ったように見えました。良い時に戻れば戻ったで感覚の調整はまた必要でしょうけど、思い切り投げる姿が見られるのは嬉しい。

 

 

 どのチームにもケガや不調で悩んでいる投手はいます。そういう投手が、一生懸命頑張っている姿を見られるキャンプのブルペン。彼らが戻り、良い投球をした時に、ああ本当に頑張ってたよね、ってキャンプでの努力を思い出すことでしょう。

 

まとめ

 

 いかがですか?。キャンプのブルペンならではの魅力が少しでも伝わりましたか?

 キャンプでのブルペンの見学は、球団により対応が違います。でも、周りに行くことが可能ならば、まずは一度ブルペン周辺の様子はチェックしておくことをお勧めします。本格的な投球が見られなくても、何か、試合前のブルペンでは見られる光景を目にできるかもしれません。

 もし見学できるとわかったら、できれば早めにブルペンを覗いて見ましょう。投手の練習は早いから。

 キャンプの敷地の中で、一番小さな練習場所。でも、ダイヤモンドの中心にいるピッチャーが鍛える場所は見所いっぱい。

 やっぱりスタはこう思います。ブルペンこそキャンプの華、と。