昨年末、初めての現役ドラフト会議が開催されて、12人の移籍が決まりました。終わってみたら、どの選手についても「たしかに新天地の方が可能性が広がるかな」と思え、このシステムはポジティブな方向に進められそう、と受け取れました。
この現役ドラフトの目的を考えると、今回の移籍選手が良い結果を出すことがすごく大事ですよね。選手たちの、選ばれたことに応えたい気持ちも強いでしょう。本当に頑張ってもらいたい。
と、見ている方は簡単に頑張れ頑張れ言ってしまうけど、移籍は本当に大変だと思います。今回はパ・リーグチームから移籍となった6人の、ここまでの様子に注目してみました。大丈夫かな?。新しい環境に馴染めてるかな?。
順調組
読売・オコエ瑠偉 (前楽天)
楽天で、そろそろ心機一転のきっかけがないと難しいのかなあ……という雰囲気になっていたオコエ。現役ドラフトは納得という感じですし、野球でも気質でもどこか扱いが難しいというイメージもついてしまった中、読売に選ばれたのもなんだかフィット感がある。ここでブレイクしたらすごく彼っぽい。
相変わらず目立っています。なんとなく、今度こそイケそうな気配も漂ってます。連続してヒットが出てるし、大事な場面の盗塁で原監督にめっちゃ褒められたりしてるし。
でも、「いや、まだまだこれで油断してはならんな」と思わせるのも彼ですよね。野球でも振る舞いでも、いい感じになったところで何かやらかしてはズッコケてきましたからね。野球だと、活躍した後が危ない。振る舞いで言ったら、移籍直後も社交の方でちょっと怪しくなった瞬間がありました。
とにかく、彼の場合は「イケそう!」って先走らないのが一番の期待なのかも。そのぐらいやれてフツーだろ?って思ってあげるのがいいのかも。いい時ダメな時は選手なら誰にでもあるわけで、彼の場合は、ダメな時を普通のダメさにとどめてくれることが重要かなって思います。
原監督に絶賛されてもコメントはおとなしいので、勝負は始まったばかりと自覚していますよね。浮き沈みの激しさは運の要素もあるけど、自分の力で落ち着かせていってほしいオコエです。
【巨人】#オコエ瑠偉 の盗塁を原監督が絶賛「個人で巨人を救った」本人は「うれし恥ずかし」|東スポWEB https://t.co/GyPIGxEQFW
— 東スポ (@tospo_prores) 2023年3月2日
阪神・大竹耕太郎 (前ソフトバンク)
ソフトバンクに育成ドラフトで入団し、1軍で先発するまでになった大竹。でも、投手層が厚いソフトバンクでは、1軍先発のチャンスはそう多くはもらえません。少ない登板で結果を出す必要があるのです。なかなか好結果が続かずに、だんだん機会が減っていきました。
選手層が薄いチームならまだ残っていたでしょう。彼のレベルで現役ドラフトにかかるのかという声もあったようですが、彼のような環境にあった選手こそ現役ドラフトにふさわしい、本来の目的に一番適っていたのかも、と思ったりします。
新天地での彼の球春は順調に暖かくなってきている模様。ソフトバンクに思い入れも強かったようだけど、移籍先の監督は大学の大先輩で、新たな縁が生まれました。中々回ってこなかった1軍のマウンドに上がるチャンスも増えそうですね。ものにしていってほしいです。
ロッテ・大下誠一郎 (前オリックス)
オリックスの育成ドラフト選手だった大下。入団1年目で支配下登録され、初打席初安打初ホームランというド派手な1軍デビューを果たしました。そして、博多弁丸出しのヒーローインタビューや、ベンチでのうるさいぐらい大きなダミ声で一躍人気者に。その年はしばしば1軍起用がありました。
しかし、その後は中々1軍の壁が厚く、ファーム暮らしが続きます。たまに1軍で出場した時も切羽詰まった焦りが表情に出て、1年目の時のおおらかさが消えていました。若手内野手の有望株が多い中、機会がさらに減るのは目に見えていて、オリックスの在籍年数は短いけれど、新天地があったのは良かったなと感じます。
ロッテ移籍後、キャンプ中の消息はほとんど伝わらなかったけれど、今日(3月3日)のファーム練習試合に出場し、見事にヒットを打ちました。もちろん、この時期の1本のヒットで判断はできないけれど、なんだかオリ時代晩年より落ち着いて球を見極めていた感じがします。
実を言うと、なんとなくですが、慣れない関東のロッテにも馴染めそうだなと思う瞬間が、キャンプの初日のシーンにありました。中継を見ていたら打撃練習のグラウンドに現れた大下。初めての場所でキョロキョロしながら歩く彼に、ロッテのコーチやらスタッフやら選手やらが、次々と声かけしていたのです。
挨拶の返事をするたびに、大下の顔にあの人懐こい笑顔が浮かびます。慣れない場所がすぐに心地良い仲間のいる場所に変わったようでした。移籍の不安が初日に消えたのはすごく大きいんじゃないかなと思いました。安心して伸び伸びすれば、会見で行った通り元気に泥臭くやれて、意外性のある勝負強さも戻ってきそうな大下です。
🌸春季教育リーグ🌸
— イージースポーツ (@easysportsjp) 2023年3月3日
現役ドラフトで新加入の #大下誠一郎 選手🔥
変化球を捉え右中間へタイムリーツーベースヒット‼️
🆚ロッテ vs 西武 https://t.co/Q6SGBi65yb#プロ野球 #ファーム#chibalotte #春季教育リーグ pic.twitter.com/IjyCisEXD9
ソフトバンク・古川侑利 (前日本ハム)
古川は既に4球団目。2019年にはトライアウトを経てNPBに復帰した苦労人です。九州出身で子供時代はソフトバンクファンだった彼にとって、今回は嬉しい移籍。でも、何度も言いますが、ソフトバンクは選手層が厚い。投手陣も粒揃い。存在感を際立たせる苦労は並大抵ではありません。
楽天や日本ハムなどのパ・リーグチーム在籍時の彼には、いい投球を見せるのにそれが続かない印象を持っています。まとまっていて、特徴とか個性の強さが今ひとつ弱いかもしれません。それでも、苦労を重ねてプロ野球に残り続けているし、うちで投げさせてみたいと思わせるものを持っている。
キャンプはB組スタートで、紅白試合登板なども当初は今ひとつの出来だったよう。それでも慌てず安定度を増し、終盤にはA組に合流となりました。ちょっとやそっとじゃ気持ちが折れない経験は貴重です。今度も荒波をかいくぐり、1軍切符を掴んでほしいと思います。
要調整組
日本ハム・松岡洸希 (前西武)
松岡にはちょっと不運が重なりました。フォームの見直しをしようとしていたところでの移籍。さらに、日本ハムのキャンプが、今年は初日から紅白戦をするなど非常に早い仕上がりの進行だったのです。そんな中、キャンプから2週間で対外練習試合に登板して打ち込まれ、即ファーム落ちしてしまいました。
でも、この状況に関しては、彼にとってずいぶん過酷だったと首脳陣もちゃんと理解していると思います。ひとまずは自分の状態を確認しようね、という登板だったのではないでしょうか。
まだ22歳、公立高校から独立リーグを経て特別合格枠という特異なコースでプロ入りして4年目。固まったものはまだ何もないはずで、そこを承知の上で素質を見込まれたのです。西武が手放したのは、やっぱり投手が豊富になってきたからというだけでしょう。
移籍であたふたと忙しない思いをするのも経験です。これからです。
ヤクルト・成田翔 (前ロッテ)
成田は昨日(3月2日) 紅白戦に登板して、2回4安打3失点。高津監督はご不満です。ベビーフェイスなのでまだ経歴が浅そうに感じてしまいますが、もう8年目。ロッテ時代もとても歩みがゆっくりしていて、期待されながら中々表舞台まで進まないタイプ。
すごく縁が深かった (ひいじいちゃんがロッテの工場の寮長さんby Wiki)ロッテを離れ、高校の大先輩(石川カツオ)がいるヤクルトに移籍というのは、物理的な距離は近いけど大転換期のはず。それでも、この紅白戦登板までニュースも少なくて、存在感が薄い。
やっと見つけたキャンプ前のインタビュー記事では、2軍スタートにも「とにかくあせらない」と言っている。
「いや、焦りたまえ!」
今になって読むと、思わず呟いてしまいますな。「チャンスが来た時にものにできるように」って、昨日の紅白戦もものにできていないし。7年間今ひとつでもやっぱり可能性があるから指名されます。貴重な左腕。少し焦って巻いてほしい成田です。