パ・リーグのベスト9選手の今シーズン振返り5人目はサード(三塁手)です。
開幕当初、交流戦頃、五輪期間、後半戦、終盤戦。
そういえば、彼らはそれぞれ、どんな一年を過ごして来たのだっけ?
自分の記事も遡りながら、振り返りたいと思います。
宗 佑磨(オリックス・三塁手)
ベスト9、ゴールデングラブ賞
総評
杉本と並ぶ、オリックスの大ブレイク選手。
後半戦から終盤戦になるほどに、グングン存在感を増しました。
人気者になる要素がたっぷりです。
華やかな守備、意外性のある打撃、イケメンで陽気でお茶目な性格、情の厚さ。
守備に関しては、今年前半途中から固定されたサードがハマりました。
開幕当初は外野と併用で、1塁を守っていたりもしていたのです。
サード固定になった途端に、ほぉっ!と唸らせるような好守備を連発。
特に3塁線の反応の良さと、そこから投げる送球での強肩ぶりが評判になります。
守備の指標なら茂木(楽天)が上だったりするらしい。
茂木も三遊間や前に強くて守備範囲広いし、堅実ですものねえ。
もちろん宗には優勝貢献プラスアルファもあったでしょうし。
それでもやはり、宗のあの3塁線ファウルゾーンからの送球の見事さだけでも希少。
真似のできないあの送球だけでも賞に値する、と思う人は多いかと思います。
ピッチャーズマウンドを越えたあたりからのボールの伸びがすごい。
フライングディスクが飛んでいくみたい。
「肩の強さがサードの距離がちょうど合った」なんてテレビで言うのを見ました。
監督の「適当のススメ」で気楽になった、というニュースもありましたね。
「内野は嫌いだった」けど「サードできないとクビになっちゃうから」渋々やった、という話好き。
打撃に関しては、調子が上がった時や得意な投手の時の固め打ちが目立ちました。
さらには、調子が落ちた時でも窮地の場面で起死回生の一発を放ったり、皆が打てない中で突破口になるヒットを打ったりする集中力が光ります。
課題は、苦手投手はとことん打てないところかな?
右のエース級で露骨に打率が下がる傾向が見えます。
打ててたのは、日本ハムの上沢とヒロミ(伊藤)、西武の今井ぐらいかも。
NPBアワードで、来期リベンジしたい相手に楽天の則本を挙げていましたね。
楽天戦の打率低くて、岸とマー君(田中)も打ててない。
ソフトバンクは千賀とシュータ(石川)、西武ならコーナ(髙橋)も苦手。
ロッテ戦は一番打率が下がります。
ゴエモン(石川)は超打てないし、岩下、ロウキ(佐々木)等苦手だらけ。
京セラ観戦をした時に、宗のスイング写真を撮って記事に出したんですよね。
ファインダーを覗いて、打者が肩とかピクッと反応したらシャッターを押す。
そうすると、宗の時はシャッター押すのが早くなり過ぎちゃうんですよ。
たぶん、彼が投球見極めてピクッとなるのがすごい早いんだと思います。
正尚(吉田)と同じくらいのタイミングで、ピクッとする。
正尚はピクッとなってから見極めるんですが、宗はまだそこまで行ってなかったです。
それで、最初の反応が早過ぎて、エース級投手だとかえって迷うのかなあと思ったり。
来期は相手も研究してくるし、右エースを克服できるかは成績に直結しそうです。
開幕当初
キャンプはリハビリ組に回りながらも、なんとか開幕1軍に滑り込み。
3月は主に途中出場で無安打。
4月初旬までは同様の状態で打率も1割前後、ポジションも転々としていました。
4月21日の西武戦で4打数2安打1本塁打、その後4試合も17打数6安打の活躍。
ここで、1週間で打率を1分上げます。
この時期に福田などは一度2軍落ちしているので、宗にとって大きい1週間でした。
そして5月に転機が訪れます。
GW5月3日からの西武3連戦を、初めてスタメンから3塁守備で通したのです。
<サード・宗> 爆誕の瞬間です。
適当にやれば と監督が言ったから 5月3日はサード記念日
5月は月間打率も3割超えし、着実にチームでのポジションを固めていきました。
交流戦頃
交流戦のみの打率は .292 。
前半は打ちまくり、チームの交流戦優勝に大貢献しました。
それで少し気が抜けたのか、6月トータルとしては低調な打率で終わりました。
しかし、五輪前の7月で3割を打ってなんとか少しは持ち直してもいます。
開幕後もそうですが、このままだと下かなというところで踏ん張っている。
今年の宗が抱える危機感と、簡単にはへこたれない気持ちの強さが伝わります。
徐々に、「いい選手だなあ」と知らなかったファンの目に留まり始めたのもこの頃。
パテレフィーチャーも6月後半辺りから始まりました。
五輪期間
五輪出場はありませんでした。
スタメンで出続ける経験が少ない宗。
そろそろ疲れが見えてきた頃に、ここで調整できたことは幸いでした。
後半戦
8月になると絶好調の3割超え。
チームも好調ですが、それ以上に勝ちを重ねたロッテとの首位争いが激化します。
注目が集まるようになって、同時に宗の奮闘ぶりも目立ち始めます。
特に、何度も味方を助けた豪快かつ華麗な守備は噂の的。
記事になることが増え、「もしやゴールデングラブ?」のザワザワが始まります。
2つのコラム読むと、今期の宗が中兄の役割を明確に自覚しているとわかりますね。
ソフトバンク栗原の記事で触れましたが、上と下をつなぐ中兄としての自覚が、宗のブレイクを呼んだような気がします。
それから、冒頭のサード転向コラム内でも、非常に現実的、客観的に自分を評価するところもある。
チーム公式の動画を見れば、チームメイトのこともすごく的確に観察しています。
はっちゃけた振舞いも多かったので能天気キャラに見えていたけれど、賢い子ですね。
終盤戦
9月に入るとチームに最初の試練が訪れます。
8月末のT-岡田に続き、吉田正尚が最初の離脱(肉離れ)。
チームは今季ワーストの4連敗を喫するなど下降ムードが漂い始める。
いよいよ弱いオリックスに戻ってしまうのか?
うまく回らなくなった打線を、宗はラオウと共に一生懸命支えました。
9月の打率も3割超えし、3塁打3本は特筆ものです。
そしてさらに、技術以上に宗という選手の印象を強めたのが、気持ちの熱さ。
やはり筆頭は、若くして難病による引退を余儀なくされた西浦への想いでしょうか。
9月25日試合前の円陣声出しでかわいがったこの後輩に言及し、試合ではホームラン。
ここからチームは連勝して優勝戦線に踏みとどまります。
10月は一転不調に陥りますが、気持ちだけで打つような姿を何度も見せてくれました。
明るいだけではなく、チームメイト思いで責任感が強い選手。
どん底の中でもここぞの場面では何かを起こせる「持ってる」選手。
好感度爆上がりで、今年は本当にアピールできました。
三塁手ライバルがやや手薄でしたが、宗の活躍は十分ベスト9に値したと思います。
まだまだ、打撃技術にも脆さがある。
日本シリーズでも表出しましたが、緊張すれば守備も崩れる。
経験不足ですから仕方ない。
センスだけでこなしているような部分は、来期から固めていくしかありません。
心の状態にプレーを左右するところも目立ちます。
でも、そこが大きな魅力でもある。
気持ちがダウンした時に、少しでも下がり幅が小さくなればいいじゃないですか。
気持ちが上がった時は、誰よりも魅力的なプレーをしてくれるのですから。
来期の宗に余裕があれば、もうひとつ期待したいのは盗塁です。
ランニングホームランやら、三塁打数トップやら足速いのに盗塁少ない。
盗塁で滑り込むと、スライディングで遅くなってる感じがするのは気のせいですか?
なんか、スパイクで土削り過ぎて除雪機みたいじゃないですか?
ぜひ、佐野とともに、フィルパリ・韋駄天シリーズに名を連ねてください。
来期も、凄守備と表情豊かな熱いプレーと仲間への面白コメント、待ってますよ!
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